発酵食品って面白い!
微生物の力で生まれる食品を知ろう
目には見えない微生物の活躍を知ろう
- Point!
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- 発酵って何だろう?どんな発酵食品があるのかな?
- 微生物が食べものにもたらすさまざまな変化
- 発酵食品のこと、発酵のプロに聞いてみよう!
みなさんは「発酵食品」を知っていますか。「からだによい」と言われるのを聞いたことがあるかもしれません。
実は普段食べているヨーグルトや納豆、パン、それにみそやしょうゆ、酢などの調味料、これらは全て発酵食品です。共通するのは、どれも「微生物」が関わっているということ。
紀元前5,000年頃には既に存在していたと言われる、先人たちの知恵と経験が生み出した食品です。
今回は、発酵とは何なのか、発酵食品にはどんな特徴があるのか、その面白さと魅力に迫りましょう。
発酵って何だろう?
どんな発酵食品があるのかな?
そもそも、発酵とは何なのでしょうか?
「発酵」とは、食べものの成分が微生物のはたらきで分解され、人間にとって役立つものに変化する現象です。発酵によってできた食品を「発酵食品」と言います。
発酵に関わる微生物は、大きく分けて「カビ」「酵母」「細菌」の3つです。
発酵食品には、このうち一つの微生物のはたらきでつくられる食品もあれば、複数の微生物が関わってできる食品もあります。
身近に意外とたくさんの発酵食品があると思いませんか?
世界には他にも、地域ごとに味や香りに特色のある多種多様な発酵食品があるので、調べてみると面白いですよ。
微生物が食べものにもたらすさまざまな変化
発酵とは反対に、微生物のはたらきで食べものが人にとって有害なものに変化することもあります。これを「腐敗」と言います。
どちらも微生物の活動による点は同じなのですが、人にとって安全かどうかで呼び方が変わるのが面白いですね。腐敗した食品は、食中毒の原因になります。
▶「食中毒」について詳しく知りたい場合は、こちらも読んでみましょう。
発酵が食品にもたらす利点
微生物の力で発酵させると、食べものにはさまざまなよい変化が起こります。
①保存性が高まる
食品中に発酵を促す微生物が増えると、食べものを腐敗させる微生物を寄せつけにくくします。また、発酵によってできる酸やアルコールなどには静菌作用があり、腐敗微生物が繁殖するのを抑えてくれます。
②おいしくなる
微生物のはたらきで食品の成分が分解されたり、新たな成分が合成されたりして、「うま味」が増えることがあります。また、生成される香気成分によって、独特の香りやコクが出ることもあります。
③健康によい特性が加わる
発酵によって、特定の栄養成分や、健康維持に役立つ成分が増えることがあります。また、発酵食品には全般的に消化吸収がよいという特徴があります。微生物が食品中の成分の一部を既に分解してくれているためです。
こういった利点があるからこそ、発酵食品は長い歴史の中で食べ続けられ、進化してきたのですね。
微生物そのものが、からだの役に立っている!
微生物そのものも、からだの中でよいはたらきをすることがあります。
代表例はビフィズス菌や乳酸菌です。発酵食品を食べて体内に取り入れることで腸内環境が整い、病原菌やウイルスからからだを守る仕組みである「免疫」の力がはたらきやすくなります。
また、近年、免疫を活性化してくれる乳酸菌や酢酸菌の研究が進んでいます。特別な機能が認められた菌を配合した機能性表示食品も、たくさん登場しています。
発酵食品のこと、
発酵のプロに聞いてみよう!
発酵の技術を長年研究している、キユーピー醸造株式会社 研究所の塚本やよいさんに、発酵食品の魅力や面白さを教えてもらいましょう。
キユーピー醸造株式会社 研究所
塚本やよいさん
キユーピー醸造は、お酢を製造している会社です。
「醸造」とは発酵食品をつくることを言い、お酒や調味料をつくるときに使われることが多い用語です。
※所属は2024年3月時点の情報です。
■お酢をつくる上で感じる、発酵食品の魅力を教えてください
私は発酵食品の「おいしさ」に大きな魅力を感じています。発酵させる原料によってさまざまな個性が生まれるのが、発酵の面白いところです。例えば、米からつくる米酢はまろやか、果物からつくる果実酢はキリっと爽やかといった特徴があります。発酵方法を工夫することで、原料のよさをそのまま生かすこともできれば、奥深い味わいや華やかな香りにすることもできます。
お酢の風味の最大の特徴である酸っぱい味は、「酢酸」という成分によるものです。
酢酸は、お酢づくりで活躍する「酢酸菌」がつくり出す成分で、お酢の保存性の高さを生み出しています。また、マヨネーズのように、お酢を原料の一つとして使った食品まで腐りにくくなります。酢酸にはさらに、食後の血糖値の上昇を緩やかにする、肥満気味の人の内臓脂肪を減らすのを助ける、高めの血圧を下げるなどの健康機能があることも認められています。
■発酵食品はどうやってつくられるの?
いろいろな種類の発酵食品がありますが、「カビ」「酵母」「細菌」を全て使ってつくられる米酢を例に説明しましょう。※伝統的な製法の場合です。
このように、複数の発酵工程で微生物が大活躍して、元の食べものから大きく変身した新しい食品ができあがります。
■発酵食品をつくる上で大変なことは?
生き物である微生物を扱うことです。温度や栄養分などをしっかり管理しないと微生物は死んでしまうため、居心地のよい環境を整えてあげることが私たちの大切な仕事です。そのため工場では、毎日欠かさずに微生物の面倒をみています。
また、元の原料から全く違った食品ができるので、最後までつくり終えてみないとどんな味や香りになるのかわからないところも、発酵食品づくりの難しさです。原料選びにはこだわっていますが、なかなか思うような風味にならないこともあります。
でもだからこそ、期待する風味が実現できた時はうれしいし、仕事のやりがいや面白さを感じます。
■さいごにみなさんへのメッセージをお願いします!
発酵食品にはたくさんの利点があるので、日々の食生活に上手に取り入れてくれたらうれしく思います。
私たちは、おいしくて健康にも役立つ商品の開発と、食べ方の提案を続けていきます!
微生物の力で生まれる発酵食品は、私たちの食生活をより豊かで健康的なものにしてくれています。
身の回りの食品がどのようにつくられているのか調べてみると、新たな発見があり、毎日の食事がより一層楽しくなりそうですね。
- 出典:農林水産省Webサイト「『発酵』の不思議」