「カルホープ(卵殻粉)」の知財ビジネスマッチング
2022.08.08
社会 その他
資源の有効活用
こんにちは。 キユーピー株式会社 知的財産室の石川範行です。
皆さん、「知財ビジネスマッチング」という言葉は聞いたことありますか?
各自治体が、地元企業の支援のために取り組んでいる事業のひとつです。
当社はこの事業に参加して5年ほどになります。きっかけは、1998年に出願した介護食特許(特許第3061776号「咀嚼・嚥下機能低下者用食品」)が2018年に権利終了となり、特許を貸していた他の企業から許諾料が得られなくなってしまったことです。特許は商標と異なり、永遠に権利を存続させることができず、最長でも出願から20年で権利が終了となります。キユーピーの開放特許をとおして、少しでも弊社事業の支援や収益改善、社会貢献に繋げたいという想いから、知財ビジネスマッチングへ参加しました。
このマッチングは、当社の開放特許を技術面から直接地元企業に説明することができ、また自治体の特許コーディネーターが開放特許技術を必要とする企業にダイレクトにアプローチしてくれます。そのため、キユーピータマゴやファインケミカル事業が販売する原料の技術的特徴を迅速に理解していただけて「キユーピーがそのような原料を販売しているとは知らなかった」と言われることもよくあります。
左から、キユーピー加納さん、ten(株)社長 丸山さん、川崎市産業振興財団理事長 三浦さん
実は先日、知財ビジネスマッチングの取り組みで、記者会見を行いました。
川崎市産業振興財団様をとおし、地元の菓子・パン製造販売会社である「ten」様に「カルホープ」の用途特許を許諾することとなり、カルホープを使用したten様の新商品発表会に11社の報道機関が参加されました。
カルホープ(卵殻粉)用途特許は、卵殻の多数の微細な穴により、シュー皮に移行した水分を吸収し(毛管現象)シュー皮のサクサク感を維持する技術です。
今回ten様が開発した「豆乳おからクッキーシュー」は、従来の豆乳を使用したクリームに加え、新たにシュー皮に「おから」と「卵殻粉(カルホープ)」を使用したサステナブルな商品です。「おから」も「卵殻」も本来なら廃棄されることも多いのですが、「食材」として有効活用できた事例です。開発当初ten様は「おから」のみで進めていましたが、シュー皮のサクサク感が維持できず、川崎市産業振興財団様の紹介で「カルホープ」を検討したところ解決したそうです。
「豆乳おからクッキーシュー」は1個350円(税別)で、川崎市溝口の「Len」で販売されています。
キユーピーグループでは「卵の価値を高めその魅力を配信する取り組み」のひとつとして、卵の100%有効利用に取り組んでいます。今回の事例をより多くの方に知っていただければ嬉しいです。
豆乳おからクッキーシュー、とてもおいしかったです(石川)