11月5日はいいたまごの日! ~笑顔と感動の卵加工品~ 第2回
2024.10.30
食育 その他
社会 その他
こんにちは。 キユーピー株式会社 研究開発本部 タマゴ開発部の渡邊正記です。
卵加工品に携わって43年、40万個もの卵を試作で割ってきました。第1回では変身上手な卵の可能性と日本人が卵を好む理由をお話ししました。今回は私が開発に携わった商品の開発エピソードをご紹介しましょう。
私の43年にわたる商品開発の原点は「喜ばせたい」という気持ちです。ひらめきと努力で生まれた「とろっと名人ひらけオムレツ」、好奇心と探求心から生まれた「エスプーマベース」、ハングリー精神とアクティブ思考そして行動力で開発した「HOBOTAMA」。それぞれの開発秘話にお付き合いください。
夢のオムレツ ~とろっと名人ひらけオムレツ~
とろっと名人ひらけオムレツは、成形技術と半熟技術により、お店でたべるような「ふわふわ」「とろとろ」のオムレツが手軽に楽しめる商品です。
とろっと名人ひらけオムレツを使用したオムライス
1980年代に公開された日本映画で話題になったオムライス。チキンライスの上にのせたオムレツにナイフを入れると・・・ふわとろの卵が広がっていく。そんなオムレツを冷凍食品で作れないか? という想いで開発に着手しました。しかし、薄い皮で中がとろとろのオムレツを作るのはプロでも難しく、3年間も研究を続けていましたが、半ばあきらめかけていました。そんなとき、物置を整理しているときに見つけた調理器具がきっかけで解決策を閃いたのです。
その閃きを引き出したのは、過去の商品開発の中で経験した7つの失敗やお客様からのご指摘でした。私の頭の中に独自の製造ラインが浮かび上がり、試行錯誤の末に「とろっと名人ひらけオムレツ」が誕生しました。
試作中の様子
失敗やお客様からのご指摘というのはもともと誰もが想定できないこと、そこには発明や改善のヒントが多く潜んでいるのです。エジソンの「天才とは1%の閃きと99%の努力である」という名言があるように、諦めない気持ちから生まれる閃めきと努力を大切にしています。
淡雪のような?たまご ~エスプーマベース~
エスプーマとは、スペイン語で「泡」のこと。泡安定化技術により、加熱済み・泡立て済みで幅広い泡料理がアレンジできる、卵白を主原料とするユニークな商品です。
エスプーマベースを使用したメニュー
世界で最も予約がとれないと言われたレストランのシェフが、サイフォンを使って作った「エスプーマ」。食品にガスを添加することで「空気のように軽い泡」の料理を作り話題となりました。その料理に魅了され、道具を使わず手軽に作れるようにと夢を膨らませ開発に着手しました。
しかしながら泡というのは工場で大量に作り、そのふわふわの状態を維持することが難しく、泡のメカニズムについても3年ほど研究をしましたが、実現化に向けた難易度が高く半ばあきらめていました。そんな時に特殊な素材に巡り合い、泡を安定させるヒントを得ました。その後は商品化へのスピードを一気に加速させ、泡立て装置を含めた独自の生産ラインを構築し、「エスプーマベース」の商品化に成功しました。
泡の状態を確認
この商品からは、あきらめずに挑戦し続けることで道が開けることを学びました。好奇心や探求心を持ち、私はいつも「見ている! 」、「調べている! 」、「考えている! 」、「会話している! 」ことが重要であると考えています。情報収集やコミュニケーションを大切にしています。
ほぼタマゴの味わい ~HOBOTAMA スクランブル~
この商品は、卵を使わずにスクランブルエッグのような見た目と食感を再現したプラントベースフードです。
HOBOTAMAを使用したメニュー
研究開発本部内で「世界の食の潮流」に関する議論を行い、卵の分野で動物性原材料を使わない商品への取り組みを進める方針が決まりました。こうしてプラントベースフードの開発がスタートしました。しかし卵を使わずにタマゴ加工品を作るという経験はなく社内で賛否両論! キユーピーグループの工場はほとんどが卵を使っているため、アレルギー対応の製造ラインの選定が大きな壁となりました。それでもトップからの「このような商品を先駆者として売り出すことには大きな意義がある」という熱意あるメッセージを受け、関連部署が一丸となって課題を克服し、商品化を実現しました。
新たな挑戦には困難が伴います。ですが、私は「悩んでいるなら行動にうつそう」というポジティブな発想や行動、ハングリー精神を持って取り組みました。トップを含め会社全体が思いを一つにすることで、大きな推進力が生まれることを学びました。HOBOTAMAを通じてアレルギーなどで卵を食べることができない方へ寄り添えたことは非常に嬉しい経験です。
長年にわたり先輩方が築いてきた卵加工品の技術やノウハウと我々の創意工夫で、これからも既存のカテゴリーだけでなく新しいカテゴリーのタマゴ加工品も進化し続けていきます。
ユニークな卵加工品の数々
今回は、私が世に送り出したユニークな卵加工品の開発秘話をご紹介しました。
最終回では、未来の卵加工品についての話をしましょう。それでは、また次回。