研究・調査

16/11/11

No.54

感染拡大が気になるウイルス対策の新知見

加熱変性卵白リゾチームの抗ウイルス効果の研究成果発表"新型ヒトノロウイルス"で効果を確認 あわせて、A型肝炎ウイルスの不活化も確認

10月27日(木)に日本食品衛生学会で発表しました

 キユーピーは、東京海洋大学食品微生物学研究室との共同研究により、加熱変性した卵白由来のリゾチームが、いわゆる“新型ヒトノロウイルス”を不活化することを確認しました。あわせて、アジア圏での感染事例が多いA型肝炎ウイルスにも効果があることを確認しています。これらの研究について、第112回日本食品衛生学会学術講演会(会場:函館国際ホテル/期間:10月27-28日)で発表しました。

 卵白リゾチームは、卵白中に含まれる抗菌作用を持つ酵素です。キユーピーはこれまでに、加熱変性した卵白リゾチームが1種類のヒトノロウイルスを破壊し不活化すること※1を明らかにしています。ヒトノロウイルスは、遺伝子型が異なるものが複数種存在します。また、新しい遺伝子型のノロウイルスが出現することによる、感染の拡大も懸念されています。今回の研究では、2014年冬ごろから日本国内で感染事例が増え始めた遺伝子型(GⅡ.17)を持つ、新型ヒトノロウイルスの不活化効果を調べました。その結果、加熱変性卵白リゾチームが、GⅡ.17を不活化させることを確認しました。

※1:キユーピーアヲハタニュース2015年 No.47参照
http://www.kewpie.co.jp/company/corp/newsrelease/2015/47.html

 また、あわせてA型肝炎ウイルスの不活化効果も確認しました。A型肝炎ウイルスは世界に広く分布するウイルスです。日本国内での感染症例は毎年500人程度で、あまり問題視されていませんが、アジアでの発症例が多く、世界では流行が懸念されるウイルス感染症の一つです。

キユーピーグループは、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって、世界の食と健康に貢献することを“めざす姿”として掲げています。今後も、グループのもつ素材の研究成果を通して、社会的課題の解決に貢献していきます。

【発表内容の概略】

 加熱変性卵白リゾチーム溶液で処理することによる、各種ウイルスの不活化効果を確認した。

試験1:加熱変性卵白リゾチームを用いた新型ヒトノロウイルス(GⅡ.17)の不活化

             

(方法) 卵白リゾチーム溶液を100℃-30分間加熱変性処理した。濃度が1%になるよう、ヒトノロウイルス(GⅡ.17)溶液と混和した。1時間静置したのち、Real-time PCRを用いてウイルス粒子数を算出した。

(結果) 1%加熱変性リゾチーム溶液で処理した結果、GⅡ.17の量が検出限界以下となった【図1】。

試験2:加熱変性卵白リゾチームを用いたA型肝炎ウイルスの不活化

             

(方法) 卵白リゾチーム溶液を100℃-40分間加熱変性処理した。濃度が1%となるよう、A型肝炎ウイルス溶液と混和した。1時間静置後、細胞培養法を用いてウイルスの感染価を測定した。

(結果) 1%加熱変性リゾチーム溶液で処理した結果、A型肝炎ウイルスの感染価は水で処理した場合と比べて著しく低下した【図2】。

             

独自素材「ノロクリアプロテイン」について

  キユーピーは、独自の技術※2で、卵白中のリゾチームを加熱変性させた抗ウイルス成分を「ノロクリアプロテイン」と名付け、アルコール製剤などへの活用を進めています。今後も「ノロクリアプロテイン」に関する研究や商品開発を継続していきます。

※2:国際特許出願:WO 2016/017784

【新型ノロウイルスの感染拡大について】

             

 ノロウイルスは、空気が乾燥し、気温が低下する冬場の感染報告が多く、2016年11月1日~2017年1月31日までは「ノロウイルス食中毒予防強化期間※3」です。

 国立感染症研究所の分類では、現在ノロウイルスは31種の遺伝子型(GⅠ.1~9、GⅡ.1~22)に分類されています。また、ノロウイルスは遺伝子が変異し、主要な流行型が置き換わることも分かっています。

 2014年頃からノロウイルスの流行型には大きな動きがあり、いわゆる新型ノロウイルスといわれるGⅡ.17の件数が増加しています。2015/16シーズンで見ると2014年12月まで事例数のトップだったGⅡ.4が減少に転じ、GⅡ.17が主流になっています。

※3:公益社団法人 日本食品衛生協会・都道府県市食品衛生協会主催

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