サステナビリティ・食育

17/10/12

No.64

当日の概要を報告

「地域の居場所づくりサミット」を初開催(10/2) 助成授与式&"食の居場所づくり講座"

 2017年10月2日(月)、「地域の居場所づくりサミット」がキユーピー渋谷オフィス2階ホールで行われました。第1部では、一般財団法人キユーピーみらいたまご財団による助成授与式が行われ、第2部では、一般社団法人全国食支援活動協力会が主催する「食の居場所づくり講座」が開催されました。その概要を報告します。

《第1部》助成団体が決定。初年度はA・B二つのプログラムに計20団体。

2017年4月に設立した、一般財団法人キユーピーみらいたまご財団が募集する、A.食育活動助成プログラムと、B.食を通した居場所づくり支援助成プログラムには、計89団体からの応募がありました。厳正なる審議の結果、それぞれ8団体・12団体への助成が決定し、授与式を行いました。
参照)助成団体一覧 http://www.kewpiemiraitamagozaidan.or.jp/sponsor/index.html

各助成団体の代表とキユーピーみらいたまご財団の評議員および役員

 授与式の冒頭で、キユーピーみらいたまご財団理事長の三宅峰三郎(キユーピー株式会社 相談役)から、応募へのお礼と助成団体への祝辞に加え、財団設立の趣旨が改めて紹介されました。続いて事務局から、助成プログラムの応募状況・選考基準などについての説明がなされました。その後、各助成団体の活動内容と助成の具体的な内容についての紹介を経て、プログラムA・Bそれぞれの助成団体代表者に助成証書の授与が行われました。

三宅峰三郎

針谷順子氏

下川原清美氏

髙橋陽子氏

 プログラムAを代表して、特定非営利活動法人食生態学実践フォーラム 副理事長の針谷順子氏は、「30年余り続けてきた『3・1・2弁当箱法』の量的な拡大を図りつつ、一人でも多くの子どもたちにバランスのよい食事の大切さを伝えたい」と宣言し、プログラムBの特定非営利活動法人さっぽろ福祉支援ネット あいなび 理事長の下川原清美氏は、地域の子どもたち、その親、高齢者の食を通じた支援をこれからも継続することを約束しました。それを受けて、キユーピーみらいたまご財団評議員の髙橋陽子氏(公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長)は、多様で多彩な全国各地のさまざまな活動を財団がサポートしていくことを宣言しました。

《第2部》続く第2部の「食の居場所づくり講座」では、2つの講演とパネルディスカッションが開催されました。

食を取り巻く社会課題とは? 八百屋から生まれたこども食堂

             

平野覚治氏

 第2部は、この講座の主催者でもある全国食支援活動協力会の専務理事を務める平野覚治氏による講演からスタートしました。平野氏は自らが携わる活動の生い立ちについて触れながら、「地域には、孤立しがちな人たちが集まれる居場所が必要であり、そうした人々をつなぐのが『食』である」ことを語気を強めて伝えました。またその背景には、現代の食を取り巻く社会課題があること、例えば、全世帯の6割は1~2人世帯である実態から「孤立化」は特別な人だけの問題ではないことや、エネルギーの摂取を過剰に抑制する、いわゆる“やせ志向”の親世代の出現が、子どもの栄養不足を招いている実態などが挙げられました。また、食べる人も作る人も、世代を問わず誰でも参加できる「食」の活動が、地域の居場所づくりに不可欠であることを、全国各地に広がる「子ども食堂」のユニークな活動紹介を交えながら訴えかけました。

             

近藤博子氏

 続く講演は、全国の子ども食堂の先駆け的存在である「だんだんこども食堂」を主宰する近藤博子氏を招いて、これまでの歩みや広がり続ける活動の内容、またそれらの活動を続けることで得られた気づきやあるべき社会の姿について話をしてもらいました。近藤氏の出身地、出雲地方の方言で「ありがとう」を意味する「だんだん」。最初にそれを店名にしたのは、「気まぐれ八百屋だんだん」という、野菜の配達をするお店だったそうです。その後、店頭でも野菜の販売を始めた近藤氏は、お店が買い物客のたまり場になったことで、一人暮らしの多さ・子育てに悩む人の多さを肌で感じ、井戸端会議ができる「場」の必要性を実感することに。以降、集う人の求めに応じてさまざまな活動が始まり、2012年には「だんだんこども食堂」がついにオープンしました。これらの活動を通じて近藤氏は、多くの気づきを得たそうです。「子どもは地域で支えるのが一番。真ん中に子どもの笑顔がある社会は、大人にとっても住みやすい社会になる」、そう思いながら日々活動を続けていると締めくくりました。

これから子ども食堂を始める人に向けて。キーワードは「場所」と「仲間」。

             

米田佐知子氏

 第2部の後半は、子どもの未来サポートオフィス代表の米田佐知子氏をファシリテーターに迎えて、パネルディスカッションを開催しました。パネリストには、「こども食堂つき」(NPO法人ほっとすぺーす・つき/千葉県佐倉市)理事長の田代和美氏、「高殿こども食堂あのね」(あさひ子ども見守りネットワーク/大阪市)代表の永田華子氏、渋谷区こどもテーブル「ささはたっこ」(東京都渋谷区)代表の森下利江氏、そして、渋谷区社会福祉協議会 地域支援係の遠藤慎之介氏の4人が登壇しました。ファシリテーターの米田氏の進行のもと、まずは、パネリストがそれぞれの活動の様子やその思いについてスライドを交えながら紹介しました。

 それらを受けて、米田氏からは、全国に広がる子ども食堂が、大きく3つに分類できるのではないか、という投げ掛けがなされました。パネリストからは、彼らが運営する子ども食堂は①か②に分類され、「表向きは②の居場所・交流型だが、実際は①の困難を抱える子ども対象型です」という声も聞かれました。

子ども食堂3つの類型:

①困難を抱える子ども対象型 ②居場所・交流型 ③食育型

 パネルディスカッションの最後には、これから子ども食堂を始めたい人へのメッセージを米田氏から求められ、各パネリストから実感のこもったエールが送られました。

田代和美氏

永田華子氏

森下利江氏

遠藤慎之介氏

〈こども食堂つき・田代氏より〉
気持ちがあって、仲間がいれば、知恵が集まります。知恵があれば大概のことは何とかなりますが、運営資金は掛かりますからいつも寄付を募っています」

〈高殿こども食堂あのね・永田氏より〉
「一般の市民であり、一般のワーキングマザーである自分にも始められました。しんどい人は結構、身近にいます。助けてくれる人も結構います。一緒にがんばりましょう」

〈ささはたっこ・森下氏より〉
とにかく『場所』は大事です。安くて、快く貸してくれる場所と、仲間が3人いれば大丈夫。子どもはカレーが大好きですから、カレーから始めるのをお勧めします」

〈渋谷区社会福祉協議会・遠藤氏より〉
「大人から遊ぶ場や居場所を奪われた子どもたちに、『居場所』を作る支援を『こどもテーブル』を通じてどんどん進めていきたい

 当日、会場には100人を超える方が聴講に来られました。助成団体の皆さんはもちろん、子ども食堂を運営している人やそうした活動を応援したいと思っている人など、多くの方々が高い関心をもって集まりました。
 キユーピーみらいたまご財団では、今後も、「食を通じて社会に貢献する」というキユーピー創業当初からの精神のもと、食育や食を取り巻く社会課題の解決に向けた支援事業はもとより、地域の居場所づくりに役立つような勉強会などを開催していきます。

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