研究・調査
17/09/04
No.57
【研究報告】マヨネーズを調理に使って食の課題を解決
マヨネーズで調理をすると、肉や魚料理の臭いが抑えられ、食べやすくなります
9月1日に日本調理科学会で発表しました
キユーピーは、マヨネーズの機能をいかした調理の工夫について研究を進めています。この度、マヨネーズを使って魚や肉を調理すると、食材特有の「臭い」を抑えて食べやすくなることがわかりました。この内容を8月31日~9月1日に開催された日本調理科学会平成29年度大会(会場=お茶の水女子大学:東京都文京区)で発表しました。
「臭い」が食欲に与える影響は大きく、好ましくない臭いを抑えることは調理をする上で重要です。特にがん治療時による副作用や妊娠のつわりがある人は、嗅覚が変化し臭いに敏感になります。吐き気やむかつきを感じることもあり、食欲が低下して必要な栄養がとれなくなることも懸念されます。魚や肉は良質なたんぱく質を含む半面、臭いが気になる食材です。今回の研究では、健常者を対象として、マヨネーズを魚や肉の調理に使うことで、食欲不振の原因ともなる臭いを抑えて食べやすくする可能性を検討し、評価しました。
研究の結果、魚(かじきまぐろ)にマヨネーズを加えたソースを表面に塗り、焼くことでマヨネーズを使わない場合と比較して、有意に魚臭さを抑えられることがわかりました。また、マヨネーズを鶏むね肉に漬け込んで焼いた場合、マヨネーズを使わない場合と比べて、有意に臭いが抑えられることが明らかになりました。さらに、官能評価では、2メニューともに、マヨネーズを使って調理したほうが「おいしい」という評価が得られています。
キユーピーは、これまでにも、マヨネーズで野菜を炒めることで野菜の苦味を抑えられるなど、マヨネーズで料理を食べやすくできることを発見し、報告しています。今後も研究活動を通してマヨネーズの新しい可能性を探るとともに、食卓を楽しくし、生活に役立つ情報を届けていきます。
■研究概要
1.サンプル調製
かじきまぐろのマヨネーズ焼き
かじきまぐろを3㎝のさいころ状に切り、軽く塩こしょうをする。表面にみじん切りのパセリ・パン粉・マヨネーズを合わせたものを塗り、オーブントースターで焼いた群を【MS(+)】とした。マヨネーズを加えない群【MS(-)】は、マヨネーズと同量の大豆油を加えて調理した。
鶏むね肉のマヨネーズ焼き
ひと口大のそぎ切りにした鶏むね肉をボウルに入れて、マヨネーズを加えて10分間漬け込んだのち、油をひいたフライパンで焼いた群をサンプル【MS(+)】とした。マヨネーズを加えない群【MS(-)】は、マヨネーズに含まれるのと同量の食塩を加え、漬け込みをした。
いずれのサンプルも試食時は60℃に温めて提供した
2.結果
2-1.SPME-GC-MSによる臭い成分の分析(機器測定)
<評価方法>
各サンプルの臭い成分を分析し、臭い成分としてbutanal、hexanal、2-hexanalに着目し、その差を比較した。
使用機器:SPME-GC-MS(Agient Technologies製)
検定方法:t検定
<結果>
2メニューともにマヨネーズを加えることで臭い成分が有意に減少した(図1)。
butanal
hexanal
2-hexanal
図1:各臭い成分のGC-MSデータ比較
※グラフ縦軸は機器の応答値で、各成分により大きさが異なる *=P<0.05で有意差あり
2-2.調理の「臭い」、「おいしさ」に関する官能評価
<評価方法>
官能評価 (n=30)
項目 | 各料理について、2点比較法 ・喫食前と喫食後の臭いの強度(7段階) ・おいしさ(7段階+フリーコメント) |
---|---|
検定方法 | 臭いの強度評価を0~6点(ない→非常に強い)、 おいしさの評価を1~7点(非常においしくない→非常においしい)とし、 その点数の平均値の差を、対象のあるt検定で検定した。 |
<結果>
2メニューともに、喫食前・喫食後ともMS(+)群で臭いを感じる程度が有意に低かった(図2、および図3)。また「おいしさ」の評価はMS(+)群で有意に高く、「非常においしい」「おいしい」「ややおいしい」と回答した人は「かじきまぐろのマヨネーズ焼き」では全体の87%、「鶏むね肉のマヨネーズ焼き」は70%だった。(図4、図5)。
図2:かじきまぐろのマヨネーズ焼き 「魚の臭い」の強度(官能評価)
(左:喫食前、右:喫食後)
n=30 平均値±標準誤差 *=P<0.05で有意差あり
図3:鶏むね肉のマヨネーズ焼き 「鶏の臭い」の強度(官能評価)
(左:喫食前、右:喫食後)
n=30 評価の平均値±標準誤差 *=P<0.05で有意差あり
図4:各料理の「おいしさ」(官能評価)
(左:かじきまぐろのマヨネーズ焼き、右:鶏むね肉のマヨネーズ焼き)
n=30 評価の平均値±標準誤差 *=P<0.05で有意差あり
図5:「おいしさ」評価の度数分布
(上:かじきまぐろのマヨネーズ焼き、下:鶏むね肉のマヨネーズ焼き)