研究・調査

17/09/06

No.58

【研究報告】マヨネーズを使った調理の工夫

鶏むね肉をマヨネーズに10分漬け込むだけでしっとりやわらかくジューシーに焼き上がります

9月1日に日本調理科学会で発表しました

 キユーピーは、マヨネーズの機能をいかした調理の工夫について研究を進めています。この度、鶏むね肉をマヨネーズに漬け込んでから焼くことによる食感・食味の改善効果とその原理について、8月31日~9月1日に開催された日本調理科学会平成29年度大会(会場=お茶の水女子大学:東京都文京区)で発表しました。

 肉類は加熱するとたんぱく質が結合して固くなります。鶏むね肉は安価で栄養価が高い食材ですが、加熱すると硬くなったり、パサつくなど食感や食味が悪くなることが知られています。今回の研究では、鶏むね肉をマヨネーズに漬けてから焼く効果の定量化と原理の解明を目指しました。
 研究結果からは、マヨネーズに漬け込んで焼くことで、パサつきが抑えられてやわらかくジューシーになることや、10分間の漬け込みで効果があり、その時間が長いほどやわらかくなる傾向が明らかになりました。また、食感の改善にはマヨネーズの乳化が寄与しており、植物油の影響が大きいことが示唆されました。

キユーピーは、今後もマヨネーズの新しい可能性を探るとともに、食卓を楽しくし、生活に役立つ情報を届けていきます。

■研究概要

             

官能試験用サンプル
左側:対照品(マヨネーズなし)
右側:試験品(マヨネーズあり)

サンプル調製

 鶏むね肉にマヨネーズ(肉重量に対して12%)をもみこみ、一定時間冷蔵した。漬け込み後、210℃で予熱したオーブンで10分間焼いたものをサンプルとした。なお、鶏むね肉は、官能評価には厚さ2㎝、機器測定には厚さ2㎜のスライスとし、対照品はマヨネーズの代わりにマヨネーズに含まれる量と同量の食塩で漬け込みを行った。

<サンプル配合量:鶏むね肉100g当たり>

材料 試験品:マヨネーズあり 対照品:マヨネーズなし
鶏むね肉 100g 100g
マヨネーズ 12g 0g
食塩 0g 0.22g※

※食塩はマヨネーズ中の量と同じ

試験1:マヨネーズによる鶏むね肉の食感および食味の改善効果

1-1.漬け込みの効果と漬ける時間の影響

 マヨネーズに10分間および30分間漬け込んで調製したサンプルのやわらかさを、対照品(食塩を30分間漬け込み)と比較した。

<評価方法>

機器測定(破断応力※)

  • 使用機器:Texture Analyzer TA.XT.plus(Stable Micro Systems社)
  • 検定方法:Tukey HSD検定

※鶏肉を刃でせん断するのに必要な力の最大値。小さいほど噛み切りやすいため、「やわらかさ」の指標とした。

<結果>

10分間、30分間ともに対照品と比較して有意にやわらかくなった。漬け込む時間が長いほど破断応力が小さくなった(図1)。

図1:漬け込み時間と鶏むね肉のやわらかさの関係
n=10 平均値±標準偏差 *α=0.01で有意差あり

 以上から、鶏むね肉にマヨネーズを漬け込んで調理することで、焼いた時にやわらかくなることが明らかになった。また10分間の漬け込みで効果があり、漬け込む時間が長いほうが、よりやわらかくなる傾向が見られた。

 以降の試験では、マヨネーズおよびその原料を鶏むね肉に30分間漬け込んでサンプルを調製し、試験を行った。

1-2.食感および食味の改善効果

<評価方法>

官能評価 (パネル20人による評価)

項目 2点比較法
  • 食感:やわらかさ、ジューシー感(7段階)
  • 食味:しっとり感、おいしさ(7段階)
検定方法 t検定

<結果>

対照品と比べて試験品は、「やわらかさ」「ジューシー感」の評価が有意に高く、また「しっとり感」「おいしさ」も有意に評価が高かった(図2)。

図2:鶏むね肉の食感および食味の評価(官能評価の係数値)
n=20 *P<0.001で有意差あり

<評価方法>
ろ紙への肉汁(水分)移行性
サンプルの上下にろ紙を置き、上部から2kgの負荷をかけて1分間静置し、ろ紙の重量変化を測定。『ろ紙の重量変化/サンプル重量』で係数化した。

検定方法:t検定

             

図3: 肉汁の比較(係数)
n=10 平均値±標準偏差 *P<0.001で有意差あり

<結果>
対照品と比べて試験品は肉汁が有意に多かった(図3)。

以上から、マヨネーズに漬け込み調理をすることで、鶏肉の内部に肉汁を閉じ込めて、「やわらかく・ジューシーに」かつ「しっとり・おいしく」なることが明らかになった

試験2:鶏むね肉がやわらかくなる仕組みの検証

2-1.乳化がやわらかさに与える影響

 食感改善には乳化が影響していると考え、マヨネーズ(MS群)と同量の原料を乳化させない状態で加えたサンプル(未乳化群)を調製し、やわらかさを比較した。

             

図4: 乳化がやわらかさに与える影響
n=10 平均値±標準偏差 **α=0.01、*α=0.05で有意差あり

<評価方法>
機器測定(破断応力)
方法は試験1-1と同じ

<結果>
MS群で破断応力が最も小さくなり、未乳化群と比較して有意に破断応力が小さかった(図4)。

2-2.マヨネーズの原料(油・卵・酢)による効果

             

図5: マヨネーズ中の原料のやわらかさへの影響
n=10 平均値±標準偏差 *α=0.01で有意差あり

マヨネーズ中のどの原料が食感の改善に寄与するかを調べるため、各原料(油・卵・酢)を除いて同量の水と置き換えたサンプルを調製し、やわらかさを比較した。

<評価方法>
機器測定(破断応力)
方法は試験1-1と同じ

<結果>
油を除いた未乳化油(-)群のみ、対照品と比較して破断応力に有意な差がなかった(図5)。

以上から、鶏むね肉の食感改善にはマヨネーズの乳化が寄与しており、中でも植物油が食感改善に大きく寄与している可能性が示された。

ページの先頭に移動する