研究・調査

21/09/07

No.93

【研究報告】マヨネーズの乳化状態が寄与

袋詰めポテトサラダの口当たりの重さを改善 家庭でのおいしい作り方を工業的に再現

9月7日(火)に日本調理科学会で発表

 キユーピー(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:長南 収、以下キユーピー)は、惣菜の製造を手がけるグループ会社のデリア食品株式会社(本社:東京都調布市、代表取締役社長:柴崎 健)とともにポテトサラダのおいしさについて研究を進めています。このたび、乳化状態を変化させたマヨネーズを袋詰めポテトサラダに使用すると、袋詰めサラダ特有の「口当たりの重さ」が軽減され、食べやすくなることが分かりました。この内容を9月7日~9月8日に開催の一般社団法人日本調理科学会2021年度大会(オンライン形式)で発表します。

【研究の要点】

演題「袋詰めポテトサラダの風味に及ぼすマヨネーズ乳化状態の影響」

             

冷圧フレッシュ製法®のポテトサラダ

 袋詰めポテトサラダの課題の一つである「口当たりの重さ」を軽減するため、マヨネーズに着目して研究しました。

 研究の結果、ポテトサラダに乳化状態を変化させたマヨネーズを使用することで、マヨネーズの風味持続性はそのままに、口当たりの重さが軽減されることが分かりました。併せて、袋詰め後の静菌処理に超高圧処理※1を用いてもマヨネーズの乳化状態は変化しないことが分かりました。この「口当たり」には、マヨネーズの口溶けにつながる乳化状態が大きく影響していることが示唆されました。

※1 超高圧処理を用いた独自の最新技術である静菌処理方法「冷圧フレッシュ製法®」により、素材本来の食感や色味を残し、味わいを維持した、冷蔵で20日間日持ちする袋詰めポテトサラダなどを製造・販売している。

 キユーピーは、これまでに、家庭でのポテトサラダの作り方を検証し、おいしい作り方について科学的に解明し発表してきました※2。今後も研究活動を通してマヨネーズや惣菜の新しい可能性を探るとともに、食卓を楽しくし、生活に役立つ情報を届けていきます。

■研究概要

[背景・目的]

 一般的においしいポテトサラダの特徴は、「マヨネーズの風味持続性」と「サラダの口当たり」のバランスがとれていることとされています。乳化状態を調整したマヨネーズを使用することで、このバランスがとれた状態を工業的に再現できることが先行研究※2にて示唆されました。工業的に作る真空包装された一般的な袋詰めポテトサラダは、家庭で作るものとは異なり、サラダ中に含まれる空気が少なく、サラダの密度が高い傾向にあることから、マヨネーズをはじめ、サラダ全体の風味持続性が高まり、口当たりが重くなる課題があります。今回、マヨネーズ単独での評価に加えて、袋詰めポテトサラダのうち、超高圧処理を用いたサンプルにおいても、マヨネーズの乳化状態による風味への影響を検討しました。

[サンプル]

以下の3種類をモデルマヨネーズとして評価した。
① 乳化粒子の大きいマヨネーズ(平均粒子径 10μm以上)
② 乳化粒子の小さいマヨネーズ(平均粒子径 10μm未満)
③ ①と②をブレンドさせ、乳化粒子が混在したマヨネーズ

[評価方法]

  • マヨネーズの口溶け評価
    機器測定:羽根型粘度計を用いた試験によってマヨネーズの口溶け評価をした。
    マヨネーズの官能評価:10点法にて分析型官能評価を実施した。パネルは研究員8名(男性5名、女性3名)とした。
  • マヨネーズの乳化状態評価
    粒度分布計を用いた試験によってマヨネーズの乳化粒子の大きさを測定した。
  • サラダの官能評価
    10点法の分析型官能評価によってマヨネーズのコクと口溶け評価をした。
    また併せて10点法にて嗜好性評価も実施した。パネルはどちらの評価も研究員8名(男性5名、女性3名)とした。

試験1:マヨネーズの口溶け評価

<方法>

乳化状態が異なるマヨネーズについて、羽根型粘度計を用いて口溶け評価を行った。また嗜好性についても分析型官能評価を実施した。

<結果(グラフ1、グラフ2)>

機器測定の結果、マヨネーズの乳化状態によって口溶けに有意な差があった。また分析型官能評価では、①の乳化粒子の大きいマヨネーズと③のブレンドしたマヨネーズは、口溶けが良い結果が示された。また機器測定結果と官能評価結果は相関関係にあることも示された。

グラフ1 マヨネーズの口溶け 機器測定結果
(Tukey’s test , p<0.05, 異なるアルファベット間に有意差あり)

グラフ2 マヨネーズの口溶けの分析型官能評価結果

試験2:超高圧処理によるマヨネーズの乳化状態への影響評価

<方法>

③の乳化粒子をブレンドしたマヨネーズにおいて、超高圧処理がマヨネーズの乳化状態に影響を及ぼすかを調べるため、粒度分布によって乳化粒子径を測定した。

<結果(グラフ3)>

③の乳化粒子をブレンドしたマヨネーズにおいて超高圧処理による乳化破壊などの傾向はなく、元の乳化粒子分布を維持していた。

グラフ3 超高圧処理前後のブレンドしたマヨネーズの粒度分布
(青線:超高圧処理前 赤線:超高圧処理後)

試験3:モデルマヨネーズを使用した袋詰めポテトサラダ(超高圧処理)の官能評価

<方法>

上記モデルマヨネーズを用いてポテトサラダを作り、袋詰めした後、超高圧処理を施したサンプルについて、10点法による分析型官能評価と嗜好性評価を実施した。

<結果(グラフ4、グラフ5、表1)>

分析型官能評価では、③が「マヨネーズの口溶け」と「風味持続性のバランス」が最も良いことが示唆された。
嗜好性評価でも③が最も好ましいと評価された。

グラフ4 分析型官能評価結果

グラフ5 嗜好性評価結果

表1 官能評価時コメント

 以上の結果から、袋詰めポテトサラダに使用するマヨネーズの乳化粒子サイズを調整することで口当たりの重さが軽減され、食べやすさが向上することが明らかになった。
 また、超高圧処理のような工業処理を行っても、調整したマヨネーズの乳化状態に大きな変化は生じなかった。


印刷時には、PDFデータをご利用ください。

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