2004/06/24 No.33 |
★調査 |
キユーピー第15回食生活総合調査 |
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キユーピーは「食生活に関する意識と実態」の調査を1989年(平成元年)から開始し、年ごとに主婦、単身者などを対象に定期的な意識調査をしてきました。今回は15回目にあたり、今後注目される50代〜70代の「エルダー層の食生活に関する調査」を実施しました。 前回の1997年(平成9年)には主婦年齢65歳以上を対象に行いましたが、高齢世帯の増加傾向を考慮し、その特徴的な問題を析出するために、主婦年齢40〜64歳中高年齢層も調査対象とし、世代間の対比分析を行いました。 40代を比較対照に50代、60代、70代以上と各世代を比較してみると各世代の特徴、食生活の傾向が見えてきます。 【調査方法の概要】
〔1〕食卓とメニュー 〜朝、昼、夕の食場面〜 普段の献立を考える際にはどのようなことを重視しているのかを調査した。 朝昼夕の場面別に「家族と一緒の食事」の場合と「自分一人の食事」の場合とで、献立の重視点を比較した。 −朝食は時間勝負で家族の栄養バランスを取る− <図1> 朝食で最も重視されたのは、“短時間でできること”で、エルダー層の6割以上が相当する。これは、家族が一緒でも自分一人だけでも変わらない。忙しい朝の料理は特に時間との戦いである。その中であっても、家族が一緒の時は“栄養バランスが取れていること”がほとんど同じ程度に重視されている。短時間で栄養バランスの良い献立を作り、家族を送り出す主婦像が浮かぶ。しかし、自分一人となると“調理が簡単にできること”“買い置きしている材料で作れる”などが重視され、栄養バランス面の配慮は家族と一緒の時の半分近くにまで大幅に減少する。家族あっての栄養バランス意識といえる。 −昼食は簡単でヘルシー− <図1> 昼食では朝食と異なり、“買い置き材料”を活用して、“短時間”に“簡単”なものを作るといった側面が強い。自分一人の時は、“自分の好きなもの”を“短時間”で、“簡単”に“買い置き材料”で作ることが重視され、上位の項目は家族が一緒であっても、自分一人であっても大差がない。また、昼食では家族が一緒であっても“自分が好きなものを作る”が4番目にあげられているのが興味深い。 −夕食は野菜を多く取り入れた栄養のバランス− <図1> 夕食では“野菜を多く取ること”“栄養バランスが取れていること”“手作り料理であること”がそれぞれエルダー層の8割以上で重視されている。夕食で特有な献立の重視点としては、ほかに“毎日の献立に変化をつけること”“旬の素材を生かせること”“品数を増やすようにすること”“夫の好きなもの”などのように、朝食や昼食では下位に位置する項目が上位にあげられている。一日の中でも夕食では、手間をかけても家族の喜ぶ料理を作るために、野菜を多く取る、栄養バランスを取る、毎日の献立に変化をつける、旬の素材を使う、品数を増やすなどさまざまな配慮がみられる。
〔2〕調理の面倒感と手作り意識 〜調理行動の意識の変化〜 今回の調査では、面倒なことを代替する食品や食品の提供形態が増えている中で、それらの食品の利用で面倒なこと自体をやらなくなっているのか、という観点を加えた。 「5年前」の自分と比べて、調理などの実施状況に変化があるか聞いた中から6項目についての結果を下に示した。<図2> 「煮干しやかつおぶしからだしを取る」は、40代は3割の人が“前からやっていない”と答え、“やらなくなった、少なくなった”も4割に達している。50代、60代も4〜5割の人が“やらなくなった、少なくなった”と答えている。だし類の新商品が多く発売されたことに影響がうかがわれる。 「揚げ物を作る」、「挽肉をこねてハンバーグを作る」ということについては、“前からやっていない”という人は少ないが、加齢とともにやらなくなった人が増えている。時代変化というよりは加齢の変化と、例えば子供が自立して夫婦のみ世帯になったなどの、食卓環境の変化も影響している。<図3>
−家族構成の違いの影響− 前項で述べた家族類型の影響ついて、「揚げ物」を例に具体的に見てみよう。子供のいる世帯では皿数も多いし、調理への姿勢も違うようだ。各世代とも“夫婦のみ”の世帯の方が“その他”の世帯よりも、揚げ物を“やらなくなった、少なくなった”という人がかなり多い。特に、50〜64歳の主婦は、子供が結婚や就職で自立する割合も多いこともあり、“揚げ物ばなれ”がめだっている。
−市販惣菜には抵抗もあるが便利な食材− 面倒な調理の代わりに、市販惣菜は便利であるし、おいしいという評価をする主婦も増えている。図表には掲げていないが、市販惣菜についての回答で一番多かったのが“品数を増やしたい時に便利(46%)”、次いで“たまにしか食べないメニューを買う(43%)”、“おいしく作れないものを買う(31%)”などの順であり、その便利さが評価されている。 下図の問いでは、おいしさや割安感も過半の人に抱かれているが、それにもかかわらず“惣菜は添加物が多いので体に良くないと思う”“惣菜は手抜きしているようで後ろめたさがある”といった、心理的な抵抗感を圧倒的に多くの人が持っているのも事実である。
〔3〕エルダー層の健康意識 〜ポジティブヘルス(食べて健康)志向〜 ポジティブヘルス(食べて健康)とネガティブヘルス(避ける、治す)という視点からみると、ポジティブヘルスへの志向がおおかたの人に共通している。 そして最も肯定割合が少ない“加工食品でも有機野菜を使っているものがあれば少々高くてもそちらを買う”と、健康に良いなら多少の出費は構わないという姿勢がエルダーの6割に見られる。 栄養バランスを取る、緑黄色野菜を食べる、カルシウムを取る、といった“食べて健康”は40代よりも50代、そしてさらに60代が多い。
−加齢とともに「卵」の積極摂取傾向が見られる− エルダーの意識的に取る食品で年代が加齢するほど摂取意向が高くなる食品として「牛乳」「卵」「豆」「果物」が見られた。 キユーピーと関連の深い「卵」は、コレステロールのイメージからか女性の特に若い世代ほど取り過ぎに注意している(前回単身者調査、前々回一般主婦調査より)。 エルダー層についてはむしろ積極的に取る食品としての姿勢が見られる。50代以降になると「卵」(や牛乳、乳製品等)の栄養価成分(必須アミノ酸を含んだ良質のタンパク質、カルシウム、リン等)への期待度が高くなるためと思われる。
〔4〕エルダー層の買い物行動 〜宅配利用〜 現在利用している、していないにかかわらず、今後利用したい宅配・配達サービスとして一番多かったのが米屋、牛乳屋、酒屋などの一般小売店の宅配である。利用したい食品のトップは“米などの穀類やパン類”で以下の上位品目をみると、重いもの、日々調達しなければならないもの、などである。利用したい理由としては“荷物が重いので”が一番多い。なお、“品質への信頼感があるので”という理由も次いで多かった。品質面での宅配志向は、生協利用意向の多かった40代よりも50代の方が多いのが注目される。
<基礎データ> ? 高齢者人口の現状と将来
? 高齢者の就業状況
? 高齢者の暮らし
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