2004/09/24 No.58 |
★研究結果 |
キユーピー(株)研究所が学会発表 |
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マヨネーズは、殺菌力のある食酢、食塩などを含んでいるため、たとえサルモネラや黄色ブドウ球菌、大腸菌が混入したとしても、24時間以内に死滅します。この殺菌力で守られているので、マヨネーズは防腐剤を必要としません。 鳥インフルエンザについては、「食品(鶏卵、鶏肉)を食べることによりインフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていない」(農林水産省、厚生労働省)のですが、鳥インフルエンザウイルスがマヨネーズに混入したらどうなるかを調べたところ、H5型ウイルスは30分以内に、H7型とH9型ウイルスは10分以内に不活化し、感染性を失うことがわかりました(図1)。これは、食酢による作用、または乳化された植物油による作用によると考えられます。 鳥インフルエンザについても、マヨネーズは安心して召し上がっていただけます。また、マヨネーズが鳥インフルエンザウイルスの運び役になることもありません。
当社グループでは、日本で生産される鶏卵250万トンの9%に当たる23万トンを使用しています。卵はマヨネーズの主原料でもあり、卵の衛生は重要なテーマです。そこで弊社では、卵に関連する微生物の耐熱性や、食中毒菌がマヨネーズに混入したらどうなるのかなどについて調べています。 鳥インフルエンザウイルスがマヨネーズに混入したとき、30分以内に不活化する理由は二つ考えられます。 一つは、鳥インフルエンザウイルスはpHが低い(酸性になる)と不活化するので、マヨネーズに含まれる食酢の作用で感染性を失ったと考えられます。 もう一つは、乳化された植物油により、鳥インフルエンザウイルスの殻(エンベロープ)が壊され、不活化したと考えられます。 【発表】 本研究は、第25回日本食品微生物学会学術総会(平成16年9月28日、29日、於文京シビックホール)の第1日目(9月28日)に発表いたします。 【参考データ】 1.鳥インフルエンザウイルスの耐熱性 卵黄に鳥インフルエンザウイルスが混入した場合の耐熱性についても調べています。 H5型、H7型ウイルスは55℃達温(55℃になったらすぐ)で、H9型ウイルスも55℃、2分間の加熱または60℃達温で不活化し、感染性を失います(表1)。 食品衛生法では、連続式で殺菌する場合、卵黄は61℃、3.5分間と同等以上の効力を有する方法で加熱殺菌しなければならないとされており、鳥インフルエンザウイルスの感染性が消失する条件はこれよりも十分に低いといえます。 マヨネーズに使用する卵黄は、61℃、3.5分間よりも高い条件で殺菌しています。
2.マヨネーズ中の食中毒菌の消長 マヨネーズにサルモネラや黄色ブドウ球菌、大腸菌が混入したとしても、24時間以内に死滅してしまいます。これは、マヨネーズに含まれる食酢や食塩などの働きによるものです(図2)。
【参考資料】 1.ウイルス ウイルスとは、DNAまたはRNAと少数のタンパク質からなる粒子状の物質です。単独では増殖することはできないので、他の生物の細胞に侵入し細胞がもっている機能を使って、自分と同じウイルスを複製し、増殖します。 2.鳥インフルエンザウイルスと殻(エンベロープ) 鳥インフルエンザウイルスは、脂質とタンパク質でできた殻で覆われています。この殻の表面にあるタンパク質で他の生物の細胞にくっつき、侵入します。殻が壊れると細胞に侵入することができなくなり、ウイルスとしての機能がなくなってしまいます。 殻は脂質でできていますから、脂質を溶かすような溶媒、アルコールやエーテルなどで壊すことができます。 また、鳥インフルエンザウイルスはpHが低いと不活化することが知られています。 3.50%発育鶏卵感染量 ウイルスは、発育鶏卵(ヒヨコが発生する過程にある卵)に試料を接種し培養して、試料の中にいるか(感染性があるか)を調べます。 細菌であれば菌の数を測定することができますが、ウイルスは数えることができません。そこで、どのくらい希釈したときに50%の発育鶏卵が感染されるかで、ウイルスの量を表現します。
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