キユーピーアヲハタニュース
2004/10/21 No.59
★研究結果

キユーピー(株)研究所が学会発表
〜野菜とマヨネーズの組み合わせが栄養の吸収を促進〜
マヨネーズが「ビタミンK」の吸収を高める


10月22日に日本栄養改善学会で報告

 キユーピーは、野菜の栄養素を効率よく取り入れるための研究を行っています。野菜に含まれる脂溶性ビタミンは、そのままではあまり吸収されず、油に溶けると吸収が高くなることが知られています。
 今回、脂溶性ビタミンの一種、ビタミンKの吸収に対するマヨネーズの効果を調べました。ビタミンKはマヨネーズとともに食べる機会の多い野菜、ブロッコリーなどに多く含まれ、骨形成を促進する大切なビタミンです。
 実験の結果、ビタミンKは油と一緒に食べると吸収が高まり、マヨネーズと食べるとさらに吸収が高まることがわかりました。通常の食卓でブロッコリーのみを食べるより、マヨネーズと一緒に食べた方が、ブロッコリーの栄養素であるビタミンKがより効率的に吸収されると考えられます。

図1 経口投与後6時間目の血漿中ビタミンK濃度
図1 経口投与後6時間目の血漿中ビタミンK濃度
【〜ラットによる試験より〜】

 ビタミンKにはK1(フィロキノン)とK2(メナキノン)があり、ビタミンK1は主に緑黄色野菜などの植物性食品に多く含まれています。また、ビタミンK2は納豆やチーズ、バター、鶏卵、食肉に含まれていますが、納豆(870цg/100g)以外の含量はごく微量です。

ビタミンK1が多く含まれる食品を以下に示します。
(五訂日本食品標準成分表より)
  цg/100g   цg/100g
モロヘイヤ 640 ブロッコリー 160
バジル 440 サニーレタス 160
ホウレンソウ 270 めキャベツ 150
なばな(和種) 250 ミズナ 120
こまつな 210 - -
その他:だいこんやかぶの葉


 学会内容については以下の通りです。

ビタミンKについて次の実験を行いました。
実験(1) 経口投与後の血液中ビタミンK濃度の測定
実験(2) 人工胃液を用いたビタミンKの油脂への溶解性の違い

【実験(1)】
<方 法>
今回のキユーピー研究所での動物実験(ラット、n=4)では、
(1) ビタミンKと蒸留水を投与
(2) ビタミンKと植物油を投与
(3) ビタミンKと卵黄型マヨネーズを投与

<結 果>
経口投与後6時間目に採血を行い、血漿中のビタミンK濃度を測定しました。その結果、血漿中のビタミンK濃度は(1)に比べ(3)では約4倍、(2)では約3倍高い値を示しました。このことから、マヨネーズが植物油に比べビタミンKの吸収を促進することが確認されました。(図1)


【実験(2)】
<方 法>
ビタミンKが油脂に溶解されると考えられる胃の中の状態を再現し、マヨネーズと植物油で、どちらの方がビタミンKをより溶解するか検討を行いました。
ビーカー内にすりおろしたブロッコリーと人工胃液およびマヨネーズまたは植物油を加えた後、37℃で1時間攪拌を行いました。

<結 果>
ブロッコリーからのビタミンK溶出は、マヨネーズが植物油の5倍量となりました。(図2)

図2:攪拌1時間後の油脂中ビタミンK濃度
図2:攪拌1時間後の油脂中ビタミンK濃度

 胃の中では、食べた植物油と野菜を含む胃液とが分離しています。マヨネーズは酢と植物油を卵黄によって乳化している水中油滴型の乳化食品であることから、植物油単独よりも胃液中で分散されやすく、胃液と均一に混ざります。そのため、植物油よりもマヨネーズの方が野菜と触れる機会が増え、ビタミンKが溶解しやすいと考えられます。
 実験(1)、(2)の結果から、マヨネーズは植物油に比べビタミンKの吸収を高めることがわかりました。


【発表】
本研究は、第51回日本栄養改善学会(平成16年10月20日〜22日、於金沢都ホテル)の第3日目(10月22日)に発表します。


【参考】
 野菜には水溶性のビタミン(ビタミンB群やビタミンC等)、脂溶性のビタミン、カロテノイド(野菜の色素)、食物繊維、ミネラル(カルシウムや鉄、亜鉛等)などの健康維持に欠かせない栄養素が豊富に含まれています。その中でも水に溶けない脂溶性のビタミンやカロテノイドは、不規則な生活を送り、常にストレスにさらされている現代人にとって活力を与えてくれる大切な栄養素です。
 これらの野菜に含まれる脂溶性のビタミンやカロテノイドが体に吸収されるには油が必要です。油に溶け出すことにより初めて体に吸収されるのです。

脂溶性ビタミンとカロテノイドの多い野菜(きのこ含む)

ビタミンA/β−カロテン… ニンジン、モロヘイヤ、カボチャ、インゲンなど
ビタミンD…………………… シイタケ、シメジ、エリンギなど
ビタミンE…………………… ホウレンソウ、赤ピーマン、ブロッコリー、アボカドなど
ビタミンK…………………… ブロッコリー、ホウレンソウ、こまつな、ミズナなど

<ビタミンKの役割>
1) ビタミンKには骨を形成させるタンパク質(γ‐カルボキシル化オステオカルシン)の血中濃度を上昇させ、骨形成を促進する作用があります。さらに、破骨細胞の働きを抑制し、骨量減少を抑制する作用もあるので、ビタミンKの摂取は骨粗鬆症の予防に役立ちます。また、野菜にはカルシウムも多く含まれており、マヨネーズとともに野菜を摂取することにより、ビタミンKとカルシウムの相乗効果が期待できます。

カルシウムが多く含まれる野菜を以下に示します。
  mg/100g   mg/100g
モロヘイヤ 260 こまつな 170
バジル 240 なばな(和種) 160
ミズナ 270 チンゲンサイ 100
その他:だいこんやかぶの葉

2) ビタミンKの作用として血液凝固作用も挙げられます。健常人の場合、ビタミンKが欠乏することはまれですが、新生児や乳児の場合ビタミンK欠乏により消化管や皮下などから出血を起こすことがあります。腸内細菌叢が整っていないことや、母乳中のビタミンK含量が少ないことなどが原因として挙げられます。しかし、母親がビタミンKの摂取を心がけることにより母乳への移行量が高まることから、このビタミンK欠乏性出血症を防ぐことができます。


2004年3月、「日本農芸化学会」では、ニンジンなどに含まれるβ−カロテンについて調べ、マヨネーズによって吸収が高まることを確認しました。β−カロテン(2004年3月 日本農芸化学会発表資料)についての詳細は、キユーピーアヲハタニュースNo.17をご覧ください。