【発表内容】 | 1.次亜塩素酸ナトリウムおよびアルコールでの不活化効果 次亜塩素酸ナトリウム、アルコールでの殺菌が、鳥インフルエンザウイルスの不活化にどの程度効果的か、H5型ウイルスを使って調べました。 次亜塩素酸ナトリウムは100ppm以上の濃度であれば10秒間で、80%エタノールでも10秒間で鳥インフルエンザウイルスは不活化し、感染性を失うことがわかりました。 通常、割卵工場では200ppmの次亜塩素酸ナトリウムで、卵の殻の表面や割卵機、器具、備品などを消毒しています。したがって、卵表面や器具などに鳥インフルエンザウイルスが付着していても、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒ですぐに不活化するといえます。 また、手指の洗浄には、アルコール消毒が有効であるといえます。 | | 2.鳥インフルエンザウイルスの耐熱性 卵黄に鳥インフルエンザウイルスを加え、耐熱性を調べました。 H5型、H7型ウイルスは55℃達温(55℃になったらすぐ)で、H9型ウイルスは55℃で2分間の加熱、または60℃達温で不活化し、感染性を失いました(表1)。 食品衛生法では、連続式で殺菌する場合、卵黄は61℃、3.5分間と同等以上の効力を有する方法で加熱殺菌しなければならないとされており、鳥インフルエンザウイルスが感染性を失う条件はこれよりも十分に低いといえます。 キユーピーマヨネーズに使用する卵黄は、61℃、3.5分間よりも厳しい条件で殺菌しています。 | | 表1 鳥インフルエンザウイルスが不活化する条件 | | 55℃で加熱 | 60℃で加熱 | H5型 | 達温 | 達温 | H7型 | 達温 | 達温 | H9型 | 2分間 | 達温 |
| [出典]伊藤壽啓、伊藤啓史、大槻公一、指原信廣、長谷川峯夫:加熱した卵黄内における鳥インフルエンザウイルスの生残性.食品衛生研究、54(7) 21−24(2004) |
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3.マヨネーズ中での食中毒菌の消長 キユーピーマヨネーズに鳥インフルエンザウイルスを加え、消長を調べました。 H5型ウイルスは30分以内に、H7型とH9型ウイルスは10分以内に不活化し、感染性を失うことがわかりました(図1)。 鳥インフルエンザウイルスがマヨネーズに混入したとき、30分以内に不活化する理由は二つ考えられます。一つは、鳥インフルエンザウイルスはpHが低い(酸性になる)と不活化するので、マヨネーズに含まれる食酢の作用で感染性を失ったということです。もう一つは、乳化された植物油により、鳥インフルエンザウイルスの殻(エンベロープ)が壊され、不活化したということです。 | [発表] 指原信廣、大河内美穂、長谷川峯夫、伊藤壽啓、第25回日本食品微生物学会学術総会(2004) |
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【参考資料】 | 1.ウイルス ウイルスとは、DNAまたはRNAと少数のタンパク質からなる粒子状の物質です。単独では増殖することはできないので、他の生物の細胞に侵入し、その細胞がもっている機能を使って、自分と同じウイルスを複製し、増殖します。 | | 2.鳥インフルエンザウイルスと殻(エンベロープ) 鳥インフルエンザウイルスは、脂質とタンパク質でできた殻で覆われています。この殻の表面にあるタンパク質が他の生物の細胞にくっつき、侵入します。殻が壊れると細胞に侵入することができなくなり、ウイルスとしての機能がなくなってしまいます。 殻は脂質でできていますから、脂質を溶かすような溶媒、アルコールやエーテルなどで壊すことができます。 また、鳥インフルエンザウイルスはpHが低いと不活化することが知られています。 | | 3.50%発育鶏卵感染量 ウイルスは、発育鶏卵(ヒヨコが発生する過程にある卵)に試料を接種し培養して、試料の中にいるか(感染性があるか)を調べます。 細菌であれば菌の数を測定することができますが、ウイルスは数えることができません。そこで、どのくらい希釈したときに50%の発育鶏卵が感染されるかで、ウイルスの量を表現します。 (例)100万倍希釈したときに50%の発育鶏卵が感染されたとすると、50%発育鶏卵感染量は100万倍となります。 |
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