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キユーピーアヲハタニュース

2010/6/7 No.31

★研究発表

<ヒアルロン酸の機能を研究>

ヒアルロン酸が関節痛の痛みを軽減する
物質の分泌を促すことがわかりました

6月11日(金)第8回ヒアルロン酸国際カンファレンスで発表
 キユーピーは、ヒアルロン酸のさまざまな機能性について研究を進めており、これまでにヒアルロン酸を食べることで膝の痛みが軽減することを示唆する研究結果を得ています(【変形性膝関節症患者を対象にした試験結果】参照)。
 日本における変形性膝関節症の患者数は、痛みを伴う例が約700万人、エックス線上で確認される例は約2,400万人と推計されており(日本整形外科学会雑誌81巻2007年より)、医学的な治療以外にも食を通じて症状を軽減するという選択肢が広がりつつあります。
 今回、ヒアルロン酸が膝の痛みを軽減するメカニズムを株式会社ヒアルロン酸研究所(本社:東京、代表者:浅利晃)と共同で研究し、解明を試みました。
 その結果、ヒアルロン酸が腸管内の受容体と結合することで、炎症の抑制にかかわる物質の分泌を促すことがわかり、関節の痛みを軽減するメカニズムが示唆されました。
 本研究内容は、6月6〜11日に開催される第8回ヒアルロン酸国際カンファレンス(会場:京都府京都市「京都ブライトンホテル」)で発表します。

【研究内容の概略】
(方法)18週齢の膝関節炎を発症するモデルマウスに、食品用ヒアルロン酸(キユーピー(株)製「ヒアベスト®(J)」)200mg/kg・日を4週間与え、ヒアルロン酸が体のどの部位に作用しているのか、また、遺伝子およびタンパク質の発現にどのような影響を与えているのかを調べました。
(1)作用部位の確認
腸管組織の受容体(以下TLR4)に対する特異的な染色と、ヒアルロン酸に対する特異的な染色を別々に行い、染色部位を重ねる(二重染色)ことで確認した。
(2)痛みの抑制につながるタンパク質(SOCS3)の発現量の確認
HT29細胞(ヒト大腸由来)を用いたRT-PCR法で、SOCS3の発現量を確認した。
(3)痛みの抑制につながる遺伝子(IL-10)の発現量の確認
モデルマウスの血清を採取し、サイトカインアレイ法でIL-10の発現量を確認した。
(結果)上記(1)〜(3)の試験に対し、以下の結果が得られました。
(1)モデルマウスの腸管組織を二重染色した結果、TLR4の染色部位とヒアルロン酸の染色部位が一致し、ヒアルロン酸は腸管内でTLR4と結合していることがわかりました(図1〜3参照)。
※TLR4の役割・・・高分子を認識する受容体のひとつで、TLR4に高分子が結合すると様々な生体調節情報が発信されるといわれています。
図1.ヒアルロン酸染色(緑) 図2.二重染色 図3.TLR4染色(赤)
 
(2)HT29細胞(ヒト大腸由来)を用いたRT-PCR法により、腸管組織内でSOCS3の発現量が増加していることがわかりました(図4参照)。SOCS3は抗炎症サイトカイン(炎症の抑制に関与している物質)の産生を促すタンパク質です。
図4.サイトカイン制御因子(SOCS3)のRT-PCR結果
(3)モデルマウスの血清を分析した結果、抗炎症サイトカイン(炎症の抑制に関与している物質)IL-10の発現量が増加していることが確認されました(図5参照)。
図5.抗炎症サイトカイン(IL-10)の遺伝子発現
(まとめ)以上の結果から、ヒアルロン酸は腸管内の受容体と結合することで炎症の抑制にかかわる物質の分泌を促進し、その結果、炎症を伴う関節の痛みを軽減するというメカニズムが示唆されました。
【変形性膝関節症患者を対象にした試験結果】
ヒアルロン酸の摂取による変形性膝関節症患者の症状の軽減について
 キユーピーは変形性膝関節症患者を対象にした試験で、ヒアルロン酸の摂取により症状が軽減することを示唆する結果を得ています。試験の概要は以下の通りです。
(方法)変形性膝関節症の米国人25名を13名のヒアルロン酸摂取群と12名の対照群に分け、二重盲検試験を行った。ヒアルロン酸摂取群はヒアルロン酸(キユーピー(株)製「ヒアベスト®(J)」)を1日200mg、対照群はコーンスターチを8週間にわたり摂取した。
 摂取開始前、開始後4週間、開始後8週間の3回、WOMAC法※による評価を行い、両群の評価結果を比較した。
※WOMAC法
関節痛の症状を痛み、こわばり、日常生活の困難度の3つの視点から評価する、整形外科の分野では一般的な評価方法。評価は各質問事項への回答をスコア化して行い、点数の低い方が症状が軽いという評価になる。今回の試験では摂取前の痛みのスコアが10点以上の、痛みの症状が比較的強い患者のデータを統計処理した。
(結果)摂取開始後8週間で、ヒアルロン酸群と対照群との間に有意な差が認められた(図6参照)。摂取開始後4週間ではヒアルロン酸群と対照群の間でスコアに有意な差はなく、対照群にプラセボ効果※があったものと考えられる。
※プラセボ効果
検体が対照品であるにもかかわらず、被験者の試験への期待感から効果があるような結果が誘引される現象。評価が被験者の主観に基づく場合に表れやすい。
図6.ヒアルロン酸摂取試験におけるWOMAC法での評価結果
(結論)ヒアルロン酸200mg/日を8週間にわたって摂取することにより、変形性膝関節症による痛みが軽減することが示唆された。