研究レポート酢酸菌がヒトの分泌型免疫グロブリンA量増加と体調維持に貢献

※掲載内容は2022年5月時点の情報に基づきます。

体調維持の鍵「免疫グロブリンA抗体」と酢酸菌の関係に注目

近年、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を経験したことで、免疫機能や体調維持に関心が集まっています。その方法の一つとして、発酵食品をつくる有用な微生物を摂ることに注目が集まっています。キユーピーはマヨネーズの原料であるお酢をつくりだす酢酸菌の研究を、50年以上前から続けています。これまで、お酢の発酵菌である酢酸菌GK-1が、感染源の侵入を阻止する免疫グロブリンA抗体(IgA)の産生を促進することを、細胞を用いた試験で報告しています。今回は、酢酸菌の摂取がヒトでどのような機能を示すか、臨床試験により検討しました。

清野 慧至
(研究開発本部 食創造研究所 ファインケミカル開発部 酢酸菌チーム)

素材の機能性研究を通じて、新たな価値を見出し、お客様の健康に貢献したいと日々奮闘中です。

研究概要

20~64歳の健常成人で、事前アンケートによる風邪にかかりやすい人95名を2グループに分けました。1つのグループは、1日あたり酢酸菌GK-1を150億個含む食品を12週間摂取してもらう酢酸菌群としました。もう1つのグループは、酢酸菌を含まない食品を同様に摂取してもらうプラセボ群としました。摂取から6週間後、12週間後にそれぞれ、唾液中の分泌型IgA量を測定し、摂取期間中は「風邪にみられる症状」および「体調の変化」の有無について毎日記録しました。

研究成果

酢酸菌群の分泌型免疫グロブリンA抗体が増加

酢酸菌群の唾液中分泌型IgA量は、摂取から6週間後、12週間後のいずれにおいてもプラセボ群と比較して多いことが分かりました。

風邪に見られる諸症状が減少

酢酸菌群の「風邪に見られる症状」の5項目(鼻汁・鼻づまり・せき・全身倦怠感・疲労)および「体調の変化」の発症率は、プラセボ群と比較して低いことが分かりました。

出典:清野ら, 2021年度日本食品科学工学会中部支部大会 学会発表より一部改編

今後の展望

今回、酢酸菌GK-1が唾液中の分泌型IgA量を増加させ、風邪に見られる諸症状を減少させることを確認しました。これまで、酢酸菌GK-1は花粉、ホコリ、ハウスダストによる鼻の不快感を軽減させることを、ヒト臨床試験で確認しています。今後は、酢酸菌が免疫機能に及ぼす影響について、詳細な作用機序の解明やさらなるデータの蓄積を進めたいと思います。私たちは酢酸菌の持つ力を深く探り、より強く引き出すことで、人々の健康に貢献できるよう、さらなる研究開発を進めていきます。

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