研究レポート乳化油脂を加えて炊いたご飯の食後血糖値上昇抑制の検討
※掲載内容は2022年8月時点の情報に基づきます。
乳化油脂の新たな健康機能に注目
キユーピーグループでは、マヨネーズやドレッシングなどの研究開発から乳化技術を長年培ってきました。食品科学の世界では、乳化油脂はでんぷんのおいしさを保つ素材として知られており、実際にご飯やパンなどの食品に活用されています。これは脂質がでんぷんと複合体を形成して、でんぷんの老化を防止するためですが、最近ではこの複合体がレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)に分類され、食後血糖値の上昇をゆるやかにする可能性に注目が集まっています。
現在、日本の成人の17%は糖尿病が強く疑われる状態であり(令和元年 国民・健康栄養調査より)、食後血糖値の上昇抑制が重要な課題となっています。そのため食後血糖値が上がりにくく、おいしく食べ続けられる食品が求められています。しかしながら、実際にでんぷんのおいしさの維持に使われる程度の少量の乳化油脂が、でんぷんの食後血糖値の上昇を抑制するか検討した研究は多くありません。
本研究では日本人の食卓に欠かせない白米を題材として、白米のおいしさを活かせる量の乳化油脂で炊飯したご飯の食後血糖値を評価しました。
河田 尚暉
(技術ソリューション研究所 評価・解析研究部 健康栄養研究チーム)
食を通じてお客様の健康に貢献すべく、ヒト試験を中心とした食品の健康価値の探索に取り組んでいます。
研究概要
健常な成人男性17名(45.6±2.4歳)を対象として、炊飯米150 gを食べた時と乳化油脂を加えて炊飯したご飯150 g(油脂添加量:炊きあがり重量の1.2%)を食べた時の血糖値を測定しました。採血は試験食品を食べる前と摂取から30分,45分,60分,90分,120分後の計6回実施し、血糖値を測定しました。2度の試験日の間には1週間のウォッシュアウト期間を設定し、試験前日21時以降は水以外の飲食を禁止しました。
研究成果
BMIが高めの方の食後血糖値の上昇を抑制
被験者全体を対象とした解析では、群間で有意な差は見られませんでした。しかし、標準体重以上(BMI≧22)の被験者11名(46.4±2.0歳)を対象に層別解析を実施したところ、ご飯を食べた時と比較して乳化油脂を加えて炊飯したご飯を食べた時には、食後30分の血糖値が有意に低い結果が得られました。以上の結果より、乳化油脂を加えて炊飯したご飯はBMIが高めの方の食後血糖値の上昇を抑制する可能性が示唆されました。
出典:河田ら, 日本食品科学工学会第69回大会 学会発表より一部改編
今後の展望
私たちは、一人ひとりに寄り添い、食のおいしさや楽しさを感じながら健康を実現できる食品を提供したいと思っています。今回の取り組みでは、キユーピーグループが長年培ってきた乳化技術やご飯をおいしくするビネガー(酢)の使いこなし技術などを組み合わせることで、新たな可能性が見えてきました。今後は、さらなる検討を重ね、エビデンスの強化やメカニズムの解明にも取り組んでいきます。将来的にはこの技術をご飯のみならずパンや麺にも展開して、お客様がさまざまな主食をおいしく健康に食べられるように研究開発を進めていきます。