研究レポート食品の咀嚼回数や咀嚼効果の研究による健康貢献

※掲載内容は2022年10月時点の情報に基づきます。

サラダの魅力の一つ「噛むこと」を通じて、健康に貢献したい

気がつかないうちにやわらかい食べ物を食べることが多くなり、噛む回数が少なくなっていませんか?
やわらかい食べ物ばかり食べると「噛む力」の低下を招き、その低下が身体に及ぼす影響はさまざま報告されています。食育推進基本計画では令和7年度までに「ゆっくりよく噛んで食べる国民を55%以上にする」ことを目標に掲げており、国としても噛む重要性を提唱しています。
よく噛むことは、健康な体や食べる力を維持するための大切な習慣です。私たちも「噛むこと」を通じて健康に貢献したいという想いで咀嚼の研究をスタートしました。

伊東 真智
(技術ソリューション研究所 機能素材研究部 野菜価値研究チーム)

野菜の価値創出のために、野菜の未利用部活用に向けたレシピ開発やサラダの魅力の一つである「噛む」に着目した研究を進めています。

咀嚼回数ランク表の食品数の拡充

研究概要

「噛むこと」を毎日の食事に取り入れていくためには、普段の食事で実際にどの程度噛んでいるのか、噛む回数の多い食品は何かを明らかにする必要があると考え、和洋女子大学柳沢幸江教授と株式会社ロッテと共同で「咀嚼回数ランク表」の作成と食品数拡充に取り組みました。

先行研究を参考に、キユーピー従業員男女104名(男49名、女55名)から、魚肉ソーセージの噛む回数を基準に平均的な咀嚼回数の人を咀嚼パネルとして46名(男性27名、女性19名)を選定しました。その後、咀嚼パネルに様々な食品10gを自由に咀嚼してもらい、その様子をビデオカメラで撮影、後日観測者2名が咀嚼回数を計測しました。

※坂ノ下典正, 菅野 範, 大島直也, 細川芽依, 川村 淳, 大澤謙二ほか. 選抜された被験者による各種食品の咀嚼回数の検証. 日本咀嚼学会雑誌. 2020;30:66–78

研究成果

142品目の咀嚼回数ランク表

計測した食品の咀嚼回数を一覧表にしました。ランク1が咀嚼回数0-20回未満、ランク2が20-30回未満、以降それぞれは10回ずつ回数を増やし、ランク10は100回以上で区分けし、計10ランクの表として作成しました。

今回の結果は、日本咀嚼学会にて、ポスター発表(2021年10月)と論文投稿(2022年6月)を行いました。

また、先行研究の食品と合わせて142品目の咀嚼回数を一覧にまとめました。

出典:伊東ら, 食品別咀嚼回数ランク表の食品数の拡充. 日本咀嚼学会雑誌, 2022;32:12-18

咀嚼を伴う野菜摂取が食後糖代謝に及ぼす影響

研究概要

私たちは、野菜を咀嚼することが身体にどのような影響をもたらすかを明らかにするために、早稲田大学教授・宮下政司先生と研究助手・亀本佳世子先生と共同研究を実施しました。研究材料には咀嚼回数評価で比較的よく噛む結果が得られた「せん切りキャベツ」を用いました。

被検者(男性19名)には試験食として咀嚼試行(せん切りキャベツ+ゼリー飲料)と非咀嚼試行(キャベツ粉砕物+ゼリー飲料)を試食してもらいました。

食べ始めを0分として、0分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分後に、それぞれの試行で採血を行い、血糖および血糖値変動メカニズムの指標としてインスリン、インクレイン(GIP、GLP-1)を測定しました。

インスリンとインクレチンとは?

食事をすると小腸に存在している細胞の一部が刺激されてインクレチンというホルモンが分泌されます。インクレチンにはGIPとGLP-1という2つのホルモンが確認されており、それぞれの働きで膵β細胞に働きかけます。刺激を受けた膵β細胞からは血糖を降下させる唯一のホルモンであるインスリンが分泌され、食後の血糖上昇を抑える働きをします。

研究成果

食後糖代謝を促す可能性を示唆

食後90分までの経時変化を比較すると、インスリンとインクレチン(GIP、GLP-1)が咀嚼により高値を示すことが確認されました。
このことから、食事の始めに野菜を噛んで食べることで食事を受け入れる態勢が整うことが示唆されました。

食後90分までの経時変化

出典:亀本ら, 2022年度日本咀嚼学会第33回学術大会 学会発表より一部改編

今後の展望

今回の2つの研究を通じて、多くの方に噛むことの魅力を分かりやすく伝えるための情報を得ることができました。
さまざまな食品の咀嚼回数を計測することで完成した咀嚼回数ランク表を活用して、より多くのお客様へ咀嚼の重要性を発信し、噛み応えをアップさせるための食品を提案していきたいと考えています。
特に野菜は、噛み応えがあり、毎日の食卓に取り入れやすい素材の一つです。

今後、お客様が噛み応えを意識した料理を作ってみようと思っていただいた際に、参考になるような野菜を取り入れたレシピをお届けすることで、健康に貢献していきたいと考えています。

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