研究レポートマヨネーズの「口どけ」の定量化に成功

※掲載内容は2023年3月時点の情報に基づきます。

感覚に左右されない客観的な指標をめざして

私たちは、1925年にマヨネーズを日本で初めて製造・販売し、今では内食・中食・外食と幅広く、深く展開しています。
お客様と共に新たな食シーンを生み出したいという想いのもと、利用シーンに合わせ最適な商品をお届けするべく日々技術開発に取り組んでいます。中でも、中食・外食に向けた業務用のマヨネーズは、味のバリエーションはもちろん、野菜と和えてサラダにした際サラダが水っぽくならない、パンやピザと一緒に焼き上げることができる、冷凍や缶詰・レトルト食品の殺菌にも耐えられるなどのさまざまな機能が求められます。

お客様が求める条件に対して、どのマヨネーズが最も適しているのか判断できるように、一つひとつの商品の特徴をわかりやすくお伝えする必要があります。一方、マヨネーズのおいしさなどの感覚的な特性は、定量的・客観的に横並びで比べるのが難しく、評価する人の感覚に左右されることが多いのが実情です。そこで、お客様のニーズを的確にくみ取り、スピード感のあるご提案ができるよう、マヨネーズのおいしさの指標として重要とされている「口どけ」を客観的に示す研究に挑戦しました。

㊧松﨑 光伯
(食創造研究所 業務用開発部 マヨネーズチーム)

さまざまな業態の要望に対応した機能性とおいしさを両立させたマヨネーズの技術を生み出し、商品に繋げる仕事をしています。

㊨薮田 寛之
(技術ソリューション研究所 加工・包装研究部 加工プロセス技術チーム)

物性や風味変化などの感覚に頼らない評価技術の研究を通じて、おいしさと日持ちを両立させ、食品ロス削減などの社会課題の解決へ向け研究を深めています。

ステップ1 マヨネーズの「口どけ」の定義付け

研究概要

人によって「口どけが良い」と感じるポイントはさまざまです。例えば、口どけの良さの要因として、「粘度の低さ」を挙げる人もいれば、「酸味の強さ」「口の中に残る時間の短さ」を挙げる人もいます。そこで、複数の官能評価軸を検討し、評価のポイントを分析し、官能評価の評価軸を①口に入れた時の初発の粘度、②口の中に残る味の時間、③口の中に残る食感の時間の3つに絞り、官能評価(人が感じる口どけ感)に対する寄与率を統計的に算出しました。

研究成果

3つに絞り込んだ評価軸の内、③口の中に残る食感の時間の寄与率が95-97%(ステップワイズ法)と非常に高いことが分かりました。そこで、マヨネーズの「口どけ」を「口の中に残る食感の持続時間」と定義しました。

※いずれもパネル:12名、サンプル名を伏せ、常温下でマヨネーズ単体で評価した

出典:薮田ら, 日本食品工学会第21回年次大会 学会発表より一部改編

ステップ2 計測手法およびデータ解析手法の検討

研究概要

マヨネーズの食感の持続時間を左右する要素として、物性と唾液による洗い流しが大きく関与することから測定方法を検討しました。物性の計測には、回転式粘度計(+羽根型スピンドル)を用い、その測定結果の①最大値、②最終値、③最大値に達した時間から得られた値を用いることにしました。また、唾液誘発の観点から、総酸値などのサンプル特性値を用いることにしました。それらを踏まえて回帰式を導き出し、口どけ点数を算出しました。

研究成果

はじめに、口どけ点数に寄与する要素として、①最大値(これが小さいと物性として抵抗が小さい)、②最終値(小さいと口の中に残りにくい)、③最大値に達した時間(短いと短時間で崩れる)を設定して、値を算出しました。次に、唾液誘発の観点から特性値(総酸値・食塩値・アミノ酸量・糖類量)から1つ以上を因子として追加しました。それらを踏まえて導き出した回帰式により、口どけ点数を求めることが可能となり、簡便かつ高精度に「口どけ」を測定することに成功しました。
なお、本測定方法は特許を取得しています。
※官能評価に対し相関係数R^2=0.76

出典:薮田ら, 日本食品工学会第21回年次大会 学会発表より一部改編

今後の展望

本研究では、これまで定量化が難しいと考えられていたマヨネーズの「口どけ」を客観的に示すことに成功しました。これにより、お客様の求めるマヨネーズの「口どけ」に対して、的確かつスピーディーに提案ができるようになりました。
この成果を生かし、次のステップとして、「口どけ」により感じられる「おいしさ」の定量化にも挑戦していきたいと考えています。商品を使ってくださるお客様に寄り添い、ソリューションの提案をしながら、自信をもっておいしいと思える商品をお届けしていきます。

また、「おいしさ」を定量化できるようになると、日持ちを向上させる技術構築をこれまで以上に効率よく行うことが可能となります。おいしさと日持ちを両立させることで、私たちが食品メーカーとして向き合うべき社会課題である食品ロス削減についても、バリューチェーンに関わるパートナーの皆さんとともに技術力で解決をめざしていきます。

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