持続可能な食生活を送るために
フード・マイレージや地産地消について考えよう
- Point!
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- 日本の食料自給率はどのくらい?
- 食料を輸入に頼る日本の未来
- 持続可能な食生活を送るために私たちにできることは?
食べることは、私たちが生きていくために欠かせません。
では、私たちが毎日食べるものは、どこでどのようにつくられているでしょうか。
私たちが口にしている食べものは、日本国内でつくられたものもあれば、外国から輸入されたものもあります。外国から食料を輸入すると輸送距離が長く、多くのエネルギーが必要となるため、環境への負荷も大きくなると言われています。
今回は、私たちの普段の食事が環境に与える影響と、持続可能な食生活を送るためにできることを考えてみましょう。
日本の食料自給率は
どのくらい?
国内で消費されている食料のうち、どのくらい国内の生産でまかなえているかを示す割合を食料自給率と言います。
では、日本の食料自給率はどのくらいなのでしょうか?
日本の食料自給率は約40%(カロリーベース※)です。
つまり、日本人が食べているもののうち、日本国内でつくられているものは半分以下しかなく、残りは世界のさまざまな国からの輸入に頼っているのです。
日本の食料自給率は諸外国に比べてとても低く、先進国の中では最低水準になっています。
※カロリーベース:その食料のカロリーを基にした計算方法。
※数値は令和3年度の農林水産省「品目別自給率」を基にしています。肉類、卵、牛乳・乳製品は、畜産物の飼料がどのくらい国産でまかなえているかを表す飼料自給率を考慮した数値です。
食料を輸入に頼る日本の未来
食料自給率の低さは、今後どのような問題を引き起こすでしょうか?
例えば、気候変動によって異常気象が発生し、世界各地で食料生産量が減ってしまったとしたらどうでしょうか。あるいは、政治問題や紛争など、国際情勢によって食料の輸入が難しくなったらどうなるでしょうか。
普段、食料の半分以上を輸入に頼っている日本では、食べるものが足りなくなってしまい、食料を安定的に確保する生活が難しくなるかもしれません。
また、食料を輸入する際は、輸送に多くのエネルギーを使い、多くの二酸化炭素を排出するので、環境への負荷も大きくなります。
食料自給率を高めることは、日本で暮らす私たちにとって重要な目標です。日本は2030年までに、食料自給率を45%まで引き上げることをめざしています。
持続可能な食生活を送るために、
私たちにできることは?
食料自給率の低さと環境に与える影響について、もう少し詳しく考えてみましょう。
食料輸送に伴う環境への影響を示す「フード・マイレージ」という指標があります。フード・マイレージは、「生産地から食卓までの距離が短いほど環境負荷が少ない」という仮説を前提とした考え方で、「食料の重量(t)×輸送距離(km)」で表されます。
食料自給率が低いと、フード・マイレージは高くなる!
食料自給率が低いと食料を外国から輸入する必要があるため、食料を輸送する距離が長くなり、フード・マイレージの数値も高くなってしまいます。結果として、環境への負荷も大きくなるということです。
フード・マイレージの数値を低くするために、私たちの毎日の食生活ではどんなことができるでしょうか?
フード・マイレージを低くする取り組みのひとつに「地産地消」があります。地産地消の対象となるものには野菜や米、乳製品、肉、魚、加工食品などいろいろありますが、今回は種類も多く手に入りやすい野菜に注目してみましょう。
野菜の地産地消について聞いてみよう
埼玉県深谷市にある「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」を運営している深谷ベジタブルコミュニケーション株式会社
松村佳代さん、福島玲子さんに教えてもらいましょう。
二人は野菜ソムリエ※の資格をもっています。
左:松村佳代さん(野菜ソムリエ 上級プロ)
右:福島玲子さん(野菜ソムリエ プロ)
※野菜ソムリエとは、野菜・果物の知識を身につけ、その魅力や価値を社会に広めることができるスペシャリストのことです。
■地産地消ってどういうこと?
地元でつくってとれたものを地元で消費する、ということです。
私たちは地産地消が“おいしさ”にも影響する大切な要素であると考えています。収穫してからあまり時間が経っていない野菜は、新鮮でおいしいものが多いです。
■なぜ地産地消をするとフード・マイレージを低くできるの?
生産者と消費者との間の輸送距離が短いため、フード・マイレージを低くすることができます。また、輸送するためのエネルギーや二酸化炭素の排出量も少なく済むため、環境への負荷も小さくなります。
■地産地消はフード・マイレージを減らすこと以外にどんな特徴があるでしょうか?
生産者から消費者に渡るまでにかかる時間や距離が短いため、野菜農家で収穫されてから品質が落ちることなく、一番おいしい状態で届けられます。生産者が身近にいることで、安心にもつながります。また、運搬の衝撃から農産物を守る包装を省くことができるため、過剰包装を防ぐこともできます。
これらの取り組みは、国内の農業の活性化を促すため、日本の食料自給率を高めることにもつながっていきます。
■地産地消は何からはじめたらいいの?
まずは、住んでいる地域でつくられた野菜について知ることから始めてみてください。
野菜は、その土地の気候に適したものやその土地に昔から根付いているものなどがあります。私たちが働いている埼玉県深谷市は「深谷ねぎ」「ブロッコリー」「小松菜」「とうもろこし」などが特産物です。なぜその野菜が特産物になっているのか調べていくと、意外な発見がありますよ。住んでいる地域の野菜のことを知ると、食べるのも楽しくなりますよね。
ぜひ、住んでいる地域の野菜について調べてみてくださいね。
■「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」ではたくさんの野菜を育てているけど、おうちでも野菜は育てられるの?
小さいものでしたら、おうちのベランダでも育てることができます。
家庭菜園は自宅でとれた野菜を自宅で消費するので、輸送による環境負荷がなく、究極の地産地消と言えますね。ミニにんじんやオクラなどは室内でも育ちやすいので、初めてでも取り組みやすいと思います。最初は上手に育たなくてもいいんです。育てることの難しさや楽しさを学び、何度も挑戦してみてくださいね。
地産地消を体験できる「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」
この施設は、主に体験農園、マルシェ、レストランで構成されています。
農園では収穫体験ができ、マルシェでは地域の農家さんが生産する野菜が販売されています。レストランでは、地元の野菜を食べることができます。
野菜にときめく、好きになる!みんなの笑顔を育むファームです。
松村さんや福島さんに声をかけて野菜のことをたくさん聞いて、体験してみましょう!
毎日の食生活でできることから
はじめよう!
今回紹介した「地産地消」は持続可能な食生活を送るための方法のひとつ。
みなさんも、普段、食べているものがどこで生産されているのか調べたり、地域の食べものを選んで食べたり、家庭菜園にチャレンジしたりするなど、毎日の食生活の中でできることを考えて、実践してみましょう。
「地球上の誰一人として取り残さない」をキーワードにつくられた、世界共通の目標(SDGs)は、私たちの食生活とも密接に結びついています。持続可能な食生活を送るために、他にも私たち一人ひとりにできることを考え、取り組みやすいことから始めてみてくださいね。
▶SDGsについて詳しく知りたい場合は、こちらも読んでみましょう。
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出典:農林水産省Webサイト「知ってる?日本の食料事情」
出典:農林水産省「食料需給表(令和3年度)」
出典:農林水産省「『フード・マイレージ』について」