水分は「こまめに摂る」
脱水症の予防は、日常生活の中でこまめに水分補給することが大切です。一度にたくさん飲んでも排泄されてしまい、蓄えられないからです。一般的に1日あたり1,200ml以上の水分を摂ることが望ましいとされています。
コップ1杯を200mlとすると6杯分以上になるため多く感じるかもしれませんが、図1のように水を飲むタイミングを習慣づけると、続けやすいでしょう。
特に就寝前と起床時は、睡眠により長時間水分を摂らない状態が続くので、忘れずに摂るようにしましょう。
食事からも水分補給
1日の水分摂取量は、飲み物だけでなく、水分を多く含む食品に含まれる水分量も合計して考えましょう。例えば、ごはん100gには52.1gの水分が含まれていますが、おかゆや雑炊、やわらかく煮込んだ野菜のスープ、煮物や蒸し物など、調理法を変えるだけでも水分は増やすことができます。(表)
しっかり食事を摂ることは、低栄養だけでなく脱水の予防にも大切です。
表:水分を多く含む食品(100gあたりに含まれる水分量:単位g)
おもゆ | 95.0 |
おかゆ | 83.0 |
豚汁 | 94.4 |
コーンクリームスープ | 86.0 |
チキンシチュー | 76.7 |
ほうれん草のおひたし | 90.6 |
切り干し大根 | 88.4 |
ひじきの炒め煮 | 81.0 |
筑前煮 | 80.6 |
コーヒーゼリー | 87.8 |
牛乳寒天 | 85.2 |
カスタードプリン | 74.1 |
レタス(生) | 95.9 |
きゅうり(生) | 95.4 |
いちご | 90.0 |
すいか | 89.6 |
温州ミカン | 87.4 |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)より
出ていく水分も意識して
推奨されている水分量を摂っているつもりでも、出ていく水分があることを忘れていると、いつの間にか水分不足になっていた、ということもあり得ます。
コーヒーや緑茶などは利尿作用があるので、水分補給のためには麦茶や水がおススメです。
体を動かした時には汗から水分が失われますし、お酒を飲んだ時にはアルコールを分解するために水分が使われます。そのような時は、意識して多めに水分を摂りましょう。
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水1,000ml+塩小さじ1/2+砂糖大さじ4と1/2
※好みによってレモン汁などを加えてもよい。 - きれいな容器に保存し、直接口をつけずコップに注いで飲みましょう。
- 作ったものは冷蔵庫に入れ、その日のうちに飲み切るようにしましょう。
- 1回で飲む量をコップなどにとりわけ常温に戻しておくと、より速やかに吸収されます。
~自家製経口補水液の作り方~
基本
注意!
コラム:汗をかいた後のスポーツドリンク、なぜ甘い?
大量に汗をかいたときに飲む経口補水液、いわゆるスポーツドリンクには、甘みがあります。汗と共に失われた電解質は主に塩分なのに、どうして甘みが加えられているのでしょう?それは、糖分には水分の吸収速度を速くする働きがあるからです。水分の吸収量を多くする働きのある塩分と糖分の両方がスポーツドリンクには含まれているため、水分を効率よく体に吸収できるのです。
ただし、脱水予防にスポーツドリンクを毎日飲んでいた方が糖尿病になってしまった、という話もあるので注意が必要です。特に糖分摂取制限のある方は、専門家の指示に従って飲むようにしましょう。
「生活の中で無理なく」が長続きのコツ
水分摂取は、日常生活の中で水分量を意識することから始まります。しかし高齢者は水分量を増やすことよりも、トイレの回数が増えることを気にしすぎて、水分摂取を控えがちです。飲み物の量を増やすだけでなく、毎日の食事やおやつからも水分補給ができるように工夫してみましょう。
実際に食べているものや量、好みを観察しながら「おいしいね!」「どっちを食べる?」と、食べることをたのしむ雰囲気を作ることも、水分摂取に良い影響が出ます。
~食事の用意が負担のときは…~
栄養や水分のバランスを考えながら食事やおやつの用意をすることは、毎日・毎食のことだけに負担に感じることもあるでしょう。時にはみんなで外食をしたり、市販の総菜やデザートを取り入れて負担を減らすのも長続きのコツです。
まとめ
低栄養の予防に続き、水分補給による脱水予防のポイントを解説してきました。脱水は健康な方でも体調を崩す大きな原因になります。生活の中での脱水予防を意識して、無理なくこまめに水分補給をすることで、健やかな毎日を過ごしてくださいね。
参考文献
「水の家計簿-セルフチェック帳」(健康と料理社)
「日刊 住まい 住まいと暮らし」(扶桑社)
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(医歯薬出版)