キユーピーは、卵とリステリア菌について調べ、未殺菌液卵からリステリア菌が検出されることがあること、ただし菌数は低く、リステリア菌は熱に弱いため、法律に定められた液卵の殺菌条件で十分に安全性が確保されることを、7月9日にアメリカのフロリダで行われる国際学会(International Association for Food Protection)で発表します。 リステリア菌は、自然界に広く存在する食中毒菌で、あらゆる食品が原因食材になりうるといわれています。日本での食中毒事例の報告は多くはありませんが、外国では牛乳、チーズ、食肉加工品などを原因とする事例が報告されており、その実態も調べられています。 ところが卵についての研究はほとんどないため、科学的な知見を世界で共有できるように、国際学会で報告することにしました。
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図1 リステリア菌を全卵、卵黄、卵白に添加したときの消長 縦軸:菌数の対数(/g) 横軸:日数 ●:25℃で保持 □:5℃で保持 |
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当社グループでは、日本で生産される鶏卵250万トンの9%に当たる23万トンを使用しており、製品の開発や品質管理に役立てるため、卵に関連する微生物の性質や耐熱性などを調べています。鳥インフルエンザについても、2003年から鳥取大学と共同研究をし、2006年に国際学会で研究成果を発表しています(ニュースリリース 2006年 No.47)。 |
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【発表内容】 |
1.未殺菌液卵からのリステリア菌の検出 |
日本の7工場で未殺菌液卵を合計803検体サンプリングし、リステリア菌を調べた。その結果、4検体からリステリア菌が検出された。 |
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2.リステリア菌の菌数測定 |
リステリア菌が検出された4検体のうち、2検体について菌数を調べた。 いずれも25g中7.5以下であり、菌数は低かった。 |
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3.リステリア菌の全卵、卵黄、卵白中での消長 |
「2.リステリア菌の菌数測定」で、検出されたリステリア菌の菌数が低かった理由を調べるため、リステリア菌を全卵、卵黄、卵白に添加し、5℃または25℃に10日間保持して消長を調べた。 その結果、リステリア菌は卵黄中では5℃でも増殖するが、卵白中では増殖が抑制され、25℃では菌数が低減していくことがわかった(図1)。卵白に含まれ、卵を菌から守る働きをする酵素「リゾチーム」によるものと思われる。 すなわち、未殺菌液卵のリステリア菌の菌数が低いのは、卵殻の気孔(卵殻にある小さな孔)を通して菌が卵の中に侵入してきても、リゾチームの働きで殺されていくためと考察される。 |
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4.リステリア菌の耐熱性 |
検出されたリステリア菌を全卵に添加し、耐熱性を調べた。 その結果、リステリア菌は熱に弱く、60℃では0.84分で菌数が10分の1になることがわかった。 食品衛生法では、全卵を連続式で殺菌する場合、60℃、3.5分と同等以上の条件で加熱殺菌しなければならないと規定されている。60℃、3.5分ではリステリア菌数は16000分の1になる。法律で規定された条件で殺菌すれば、初菌数が低いので、十分に安全性が確保されるといえる。 |