正しく水分補給していますか?

水分だけとっても脱水予防にならない?

正しく水分補給していますか?

わたしたちの身体にとって栄養と同様に大切なのが「水分」。
その水分が不足する「脱水症」は、兆しに早く気づき水分補給することで予防できます。
ここでは高齢者の脱水症の原因と予防法を、水分補給の面から解説します。
正しい水分補給法で、健康な毎日を目指しましょう。

体に必要な「水分」

わたしたちは、体に必要な水分を体液(血液、リンパ液、唾液、消化液、尿など)として蓄えています。
体液には、身体の状態を維持する大切な役割があります。
(※図1)

加齢に伴い体重が減ると、蓄えられる水分量も減ってしまいますが、特に血液、尿、汗の量が減ることは、健康状態にも影響を与えます。
高齢者は水分不足に陥りがちなので、注意が必要です。
体液の3つの役割

(図1)※画像クリックで拡大表示

<体にはどのくらいの水分が蓄えられているの?>

体重に対して、乳児は約70%、成人男子は約60%、高齢者は約50~55%といわれています。
水分量を保つためには、1日に入る水分量と出る水分量のバランスを保つことが大切です。
排泄(尿・便)、呼気、汗などから1日におよそ2500mlの水分が失われます。それを補うためには、飲み物や食べ物から同じだけの水分を摂り入れなければなりません。
体格や食事内容にもよりますが、食べ物に含まれている水分を除き、飲み物から最低でも1日1,200ml程度の水分を摂ることが推奨されています。
(※図2)
体にはどのくらいの水分が蓄えられているの?

出典:環境省熱中症環境保健マニュアル(2014)

(図2)※画像クリックで拡大表示

みなさんは、1日にどのくらいの水分を摂っているでしょうか?
いつも使っている湯呑やコップで計算してみましょう。
(※図3)

1,200mlに満たない場合は、食事に汁物を1品追加したり、
水分補給を目的にしたゼリー飲料などをとり入れてみましょう。
1日にどのくらいの水分を摂っているでしょうか?

(図3)※画像クリックで拡大表示

脱水症とは

1日に入る水分量と出る水分量のバランスがくずれ、体内の水分量が不足するのが脱水状態です。
不足した水分量が体重の3%以上になった状態を「脱水症」といいます。
脱水症は気温や湿度が高く汗をかきやすい夏場だけのことと思われがちですが、空気が乾燥してくる秋から冬場にも注意が必要です。
(※図4)
脱水症とは

(図4)※画像クリックで拡大表示

コラム:水分を摂っているのに蓄えられない?

体液は真水ではなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質(※)と呼ばれる成分を含んでいます。
暖房、運動、発熱などで大量に汗をかいて水分を失った場合、電解質を含まない 水やお茶をたくさん飲んでも、のどは潤いますが水分は蓄えられません。
入ってくる水分によって電解質の濃度が薄められてしまうため、体は適切な濃度バランスを保とうとして、せっかく摂り入れた水分を尿として排泄してしまうからです。
日常のこまめな水分補給はお茶や白湯でもよいですが、大量に汗をかいた時には、電解質を含んだ飲み物で水分を補いましょう。
(※図5)

(※)電解質とは?
主な電解質(イオン)には、ナトリウムやクロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあり、ミネラルに属します。

水分を摂っているのに蓄えられない?

(図5)※画像クリックで拡大表示

隠れ脱水に注意!

「隠れ脱水」とは、体重の1~2%の水分が失われた、脱水症になる手前の状態のことです。
のどが渇いたり尿量が減ったりする症状が現れますが、高齢者は、「トイレの失敗をしたくない」、「トイレに行く回数を減らしたい」、「夜間トイレに起きたくない」という思いから、水分を控えがちです。
本人が水分不足を自覚していないことも多いため、「隠れ脱水」を起こしやすくなります。
(※図6)
  • <高齢者が水分不足を起こしやすい主な理由>
  • ❶ 筋肉量の減少:体液を最も多く含む筋肉が減ってきている
  • ❷ 感覚機能の低下:のどの渇きを自覚する機能が低下してくる
  • ❸ 腎機能の低下:水分や電解質の再吸収や老廃物排出機能が低下して、排出に必要な水分が増える
  • ❹ 食事量の減少:食べ物からの水分・電解質摂取量が不足している
  • ❺ 極度に水分を控える:トイレに行く回数を減らしたいなどと考えている
  • ❻ 利尿剤の服用:高血圧や腎臓病、心不全などの持病があり、利尿剤を服用している

家族や周りの方が、生活の様子から「隠れ脱水」に気づき、適切な水分補給をすすめることでを、脱水症を防ぐことができます。
日常の様子から脱水症のサインを見逃さないようにしましょう。

脱水状態

(図6)※画像クリックで拡大表示

隠れ脱水~脱水症のリスクをチェック!

加齢に伴い自覚されにくくなる水分不足。
突然脱水症になるリスクは、誰にでもあります。
家族や周りの方も、一緒にチェックしてみましょう。

    チェック 1
    隠れ脱水につながる生活背景

  •  ここ1年の間に脱水症・熱中症と診断されたことがある
  •  利尿剤を服用している
  •  検査でアルブミン値が低い(3.5g/dl以下)と診断されている
  •  一人暮らしをしている
  •  マンションのような気密性の高い家に住んでいる(日中の熱がこもりやすい)
  •  暑くても、節電のためエアコンの使用を控えている
1つでも該当したらチェック2へ

    チェック 2
    脱水症につながりやすい出来事

  •  暑い日が続いている(真夏日、熱帯夜など)
  •  下痢や嘔吐、大量の汗をかくなどを繰り返している
  •  最近、風邪をひいた
  •  最近、大きなケガや手術をした
  •  生活環境が変わった(引っ越し、家族との別れなど)
1つでも該当したらチェック3へ
    脱水症が疑われる身体状況

    チェック 3
    脱水症が疑われる身体状況

  •  食欲が減ってきた
  •  尿の回数や量が減ってきた
  •  尿の色が濃くなった
  •  便秘が続いている
  •  微熱が続いている
  •  元気がなく居眠りをしていることが多くなった
  •  口の中や唇が渇いている
  •  汗をかくことが少なく、皮膚やわきの下が乾燥している
  •  指の先が青白く、冷たい
  •  頭痛や筋肉痛を訴えている

1つでも該当したら

脱水症が疑われます。
電解質を含む飲み物やゼリー飲料で水分補給をしましょう。
さらに次のような症状がある時は、医師の診察を受けましょう。
  • 体温が37℃以上ある
  • 脈拍数が1分間に120以上
  • 爪を押して離した時、赤みが戻るまでに3秒以上かかる
  • 皮膚に張りが感じられない
  • 呼びかけに対する反応が弱い
  • 痙攣(部分的・全身的)を起こしている
  • 健康なときに比べて体重が3%以上減っている
    (例:体重が60㎏の場合に1.8㎏以上の減少)

まとめ

まとめ

わたしたちの体に必要な栄養と水分。
脱水症が引き起こされる仕組みを理解して、生活の中で予防法を取り入れていきましょう。

第5回は、「脱水症に潜む危険と対処法」。
脱水症によって引き起こされる疾患などについて紹介します。


参考文献

*1)「健康のため水を飲もう」推進運動 (厚生労働省)
*2)「介護の教科書 在宅で気をつけたい脱水対策のポイント」藤谷順子監修 2015年 (メディバンクス)
*3)「臨床栄養」Vol.125,No.3,2014 (医歯薬出版)