低栄養予防の基本は、バランスよく必要な栄養を摂ることと、体を動かすこと。本人やご家族がこの基本を意識して、毎日行うことが大切です。
栄養は食事から
栄養が不足したり、特定の栄養素が足りない時には、サプリメントや薬を利用することもありますが(専門家の指導の下で取り入れましょう)、必要な栄養量を満たすことと、食事で栄養と満足感を得ることは似て非なるものです。食事で栄養を摂ることには、大きく4つのメリットがあります。
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メリット1
自然な栄養補給法
口から食事を摂って胃腸などの消化器官を動かして体に必要なエネルギーに変えるということは、最も自然な栄養補給法で、体の免疫を維持することにもつながります。
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メリット2
五感で楽しむ満足感
味だけでなく、食感や香り、料理から発せられる音、料理の見た目もたのしむことで満足感が生まれ、さらなる食欲につながります。
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メリット3
唾液の分泌を促進
噛むことで唾液の分泌が促されたり、脳への刺激が生まれます。
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メリット4
心の栄養
誰かと食卓を囲む機会を増やすことで会話が弾み、食事をよりおいしく感じさせてくれます。たのしむことが心の栄養になります。
高齢になるにつれて食べる量が減ったり、食べるものが偏ったりしがちです。食べたくないのか、食べられない(食べにくい)のかをご家族が見極めることも大切です。
- 味覚に変化はみられませんか?
(亜鉛欠乏や薬の副作用でおいしさを感じにくくなることがあります) - メニュー、味、温度など本人の好みを踏まえた食事になっていますか?
(好きなもの、おいしいものでなければ食事をたのしめません) - とろみのつけ方は適当ですか?
(本人が飲み込みやすいとろみの状態になっていますか?) - 鎮静剤や睡眠薬の服用時間に注意していますか?
(食事時間はしっかり目覚めていることが大切です) - 食テレビやラジオの音がうるさくないですか?
(食事に集中できる落ち着いた環境を保ちましょう) - 食器の位置やコップ・スプーンの大きさ・形は適当ですか?
(食事がよく見えやすいセッティングを心がけましょう) - 食べやすい姿勢になっていますか?
(体幹の固定やリクライニングの利用などで安全に食べやすい姿勢を保ちましょう) - 歯など口の中にトラブルが起きていませんか?
(口に問題を抱えている(義歯が合っていないなど)と食べたくても食べられません)
チェックポイント
おいしく食べて栄養を摂るための工夫
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季節や行事を感じてもらい、誕生日などの記念日はお祝いの雰囲気を。
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脂質は炭水化物やたんぱく質の倍以上のカロリー!マヨネーズ・食用油・肉の脂身など
※1gあたりの栄養量 炭水化物・たんぱく質:4kcal、脂質:9 kcal
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トーストならチーズをのせてチーズトーストに。サラダなら、果物や、肉・卵等を加え具だくさんにするのもおすすめ。
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家族や友人と大人数で、たのしく色々なメニューを。片づけのことは気にせず、ゆったりたのしく食事を。
栄養価の高いマヨネーズを食事に取り入れませんか?
マヨネーズの主原料は卵・酢・油で、たんぱく質やエネルギー補給に役立ちます(※)。
※:大さじ約1杯(15g)当たり、たんぱく質0.4g、エネルギー100kcal
マヨネーズを野菜と一緒に摂ると野菜に含まれる脂溶性ビタミンの吸収を助けてくれたり、また、パサつきやすい芋などを飲み込みやすくしてくれる効果もあります。
オムレツを調理する時に混ぜると、冷めてもふんわりとした食感に仕上げることができますよ。
マヨネーズはしょうゆやみそに比べて塩分が低く、コクがでるので混ぜて使うことで塩味をうすく感じさせることなく、おいしく仕上がります。
食事と運動は車の両輪
ウォーキング
背筋を伸ばし、かかとをあげて腕を振り、リズミカルに歩きましょう。
水分・電解質補給※もお忘れなく。
※電解質とは?
主な電解質(イオン)には、ナトリウムやクロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあり、ミネラルに属します。
運動の目安
1日5,000歩
スクワット
椅子を使って安全に行いましょう。
腰を落とすときは、ひざがつま先より前に出ないように。
運動の目安
1回につき10秒ほどかけてゆっくり10回程度
片足立ち
床につかない程度に片足をあげます。
はじめは必ず安定の良いものにつかまりましょう。
慣れてきたら少しずつ手の支えを減らしていきます。
運動の目安
左右1分ずつ、1日3回程度
足上げ
椅子に座って床と水平になるように片足をあげて、10~20秒間止めたままに。
足首をまげてつま先は自分の方に向けます。
運動の目安
左右交互に10~15回程度
参考文献
健康長寿のための身体づくり-サルコペニア・フレイルを予防しよう!-
金子 多喜子(管理栄養士 日本糖尿病療法指導士)
染谷 泰寿(染谷クリニック院長)
横山 淳一(オリーヴァ内科クリニック院長)
注意!
転倒事故を起こさないよう、安全な場所で。
高齢の方は見守る人のいるところで行いましょう。
病気や障害のある方や、運動習慣がなかった方は、始める前に医師や専門家に相談しましょう。
まとめ
高齢になるにつれて食べる量が減ってきたら、量だけでなく質も意識した食事の工夫をしてみましょう。たのしい食事と無理のない運動で、低栄養知らずの毎日を目指してくださいね。