研究開発ビジョン

マヨネーズの製造に欠かせない乳化技術を進化させ、機能性を持つ商品の開発を進めてきました。例えば、キユーピーハーフは、植物油の粒子を細かく均一化することで油の表面積を増やし、コクをしっかり感じられるようにするマイクロエマルション製法により、植物油を減らしカロリーカットしながらもコクのあるおいしさを実現しています。さらに蓄積してきた技術をドレッシング、調理ソース、卵加工品、また食品以外にも化粧品や医薬品といったファインケミカル商品へ展開しています。

乳酸菌や酢酸菌をはじめとする微生物を使いこなし、付加価値の高い物質を工業的に生産する発酵技術の研究を積み重ねてきました。これまでに、マヨネーズに使用している酢をはじめ、ヒアルロン酸、乳酸発酵卵白、熟成卵黄、酢酸菌酵素などのさまざまな素材を生み出し、おいしさ、日持ち、健康、食品物性改良などの価値を実現しています。

私たちがお届けする商品のおいしさは、原料や製法へのこだわりはもちろん、科学的な視点からもアプローチしています。おいしさ創造技術は、食品の味、香り、食感の評価において、科学的な計測データと選抜された研究員による人の感覚を組み合わせ、おいしさにつながる要素を見出します。この技術を活用し、よりおいしい商品の開発やおいしさを分かりやすく伝える営業活動につなげています。

卵加工技術は、物性変化により得られた卵のおいしさをそのままの状態でお客様にお届けすることを可能とします。例えば、温めても固まらず、切れ目を入れると中からとろ～り半熟卵が流れだすオムレツ。熟練の技術がなくても半熟卵のオムレツが実現できます。他にも耐熱、耐冷凍性や成形技術などによりお客様のニーズにお応えする商品を多数開発しています。さらに、これらの加工技術を生かし、卵のような彩り・食感・風味を実現したプラントベースフードを開発し、新たな食の選択肢を提案しています。

卵、野菜、ヒアルロン酸などの強み素材の機能性を向上させるための技術開発に取り組んでいます。例えば、卵白に含まれる抗菌たんぱく質の一つである「卵白リゾチーム」は、天然の状態ではノロウイルスや新型コロナウイルスに効果を示しませんが、独自の加熱変性処理によりこれらのウイルスを不活化させる機能が付与されます。この技術はアルコール製剤や除菌シートなどに活用されています。

栄養素の正しい情報、素材や商品の機能性をお客様に分かりやすく伝えるための評価技術を蓄積しています。例えば、サラダとご飯の食べる順番による食後血糖値の変化に着目し、サラダを炭水化物の前に摂取すると血糖値の急激な上昇が抑えられるというエビデンスをヒト試験により取得しています。(グラフ参照)また、信頼性の高いエビデンスを生かし、食品の選択基準の一つである機能性表示にも貢献しています。

常温・チルドなどの保存温度帯の違う商品において、殺菌・静菌といった異なる方法を使い分けて微生物を制御しています。キユーピーグループはマヨネーズやドレッシングをはじめ、缶詰・レトルト食品や卵加工品、サラダ・惣菜などさまざまな温度帯の商品を取り扱い、それぞれに適した微生物制御と向き合ってきました。例えば、冷水の中に商品を入れ、高い静水圧をかけること（超高圧処理）で微生物の活動を制御する独自技術「冷圧フレッシュ製法^®」を開発し、素材本来の食感や色味、味わいを維持しながら惣菜などの日持ち延長を実現しています。